水岡のぶゆきグループ at 渋谷「J'z Brat」

   

昨日、水岡のぶゆきグループのライブに行ってきました。

水岡君は、20年ぐらい前に私と一緒にバンドを組んでいたこともある人。

私はぜーんぜん楽器が上達しないまま、現在にいたってまして、あくまで趣味の領域にとどまっていますが、その当時から、すでに群を抜いたテクとセンスを持ち合わせていた水岡君は、プロのジャズマンに。人生ってやつは面白いもんです。

水岡のぶゆきグループのライブが行われた場所は、渋谷の「J'z Brat」。

今年も4回、この店に出演するそうです。

2月、5月、8月、11月。

今回は2010年初の、アット・ザ・J'z Bratとなるわけですね。

次の5月、8月、11月のライブには、皆さん行きましょう(笑)。

メンバーは以下のとおり。

水岡のぶゆき(p)
中江裕気(ts,ss)
小山尚希(b,el-b)
津島周平(per)
秋葉正樹(ds)
CAMARU(vo)

ライブの後には、別の約束もしていたので、1stセットの途中までしか見れなかったのですが、なかなか楽しそうに水岡くん、音楽してましたよ。

いいよね、昔の友達のライブ姿って。

もちろん、当時より格段に進化・成長している水岡君ですが、弾いている姿は、昔とあんまり変わらない。

ちょっと懐かしい気分で、彼の背中を見ている私でした。

1曲目、《ジャスト・フレンズ》での中江氏のテナーサックスは、さながらバド・パウエルとやっているときのドン・バイアスみたい。

水岡君のピアノも途中で《ジングルベル》のフレーズを引用したりして、楽しげです。

オリジナル曲の《オール・オール・ブルース》は、8ビートのノリノリナンバー。

凝ったアレンジの曲ゆえか、ラストの部分が微妙に怪しい箇所が微量にありましたが、まあ勢いがそれを補って余りあるって感じ。

先日、あるジャズマンのマネージャーとお話をした際、「ジャズマンだって、人間なんだから間違える。ところが、ここがプロとアマの差なんだけれども、アマチュアは間違えると空中分解しかねないが、プロは間違えたところにこそ、底力を発揮するんですよ。ググッと失速しかけたところを一気に立て直して平然とした顔で演奏できるのがプロ。このハプニングと、ハプニングをどう立て直すのかも、ジャズのライブ鑑賞の面白さなんだよね。」というような話になりました。

そうなんです、ビシッときめ細かに打ち合わせをして演奏に臨むとは限らないジャズなので、ときには演奏がヤバい領域に突入して崩れかかる瞬間って、やっぱりあるものなのです、プロの演奏でも。

しかし、プロはそこで焦らずに、元の状態に戻れる実力の持ち主なわけです。

このトラブルにどう対処し、どう持ち直すのかと観察するのも、ジャズ鑑賞の楽しみです。

これはべつにライブだけに限らず、セッションに近い状態でレコーディングされたスタジオ録音のアルバムにも、トラブルっぽい演奏はたくさんあります。

とくに、《スピーク・ロウ》や《オール・ザ・シンズグズ・ユー・アー》のような、曲のスケール(長さ)が、8で割り切れない小節数のスタンダードに多いような気がします。

私もジャムセッションなどでしょっちゅう経験しているのですが、演奏前にドラムの8バース(あるいは4バース)の後にどうテーマに戻るのかを打ち合わせないまま演奏に突入してしまうと、最後の半端な4小節をどう処理すべきか、一瞬の戸惑いが音にあらわれ、それを引きずった感じで、ラストのテーマに戻る演奏もあります。

今、パッと思いだしたのが、ウォルター・ビショップ・ジュニアの《スピーク・ロウ》のオルターネイトテイクなんかが、露骨に戸惑っていて面白い(笑)。

だから、演奏に立ち会う際は、イジワルな目線で「あ、間違えた!」と鬼の首を取った気分になるのではなく、トラブルが生じた際に、演奏者はどう対処し、どう元に戻すのかという目線で見守るのが「愛」ってもんだし、「ジャズの楽しみ」ってもんなんです。

いうまでもなく、《オール・オール・ブルース》のラストは、皆さん一瞬「あれ?」という空気を醸し出したけれども、つぎの瞬間は何事もなかったかのように、無事エンディングへと着地してゆきました。

水岡君のオリジナルの《雪降る夜に》は、ピアノとベースのデュオ。

そして、ニューアルバム『ライフ』の目玉ナンバー《ボニータ》。

この曲は、先日、水岡君がゲスト出演してくれたケニー・ドリュー特集のときにもかけたナンバーです。

ヴォーカルのCAMARUさんがステージに登壇して、荒井由美の《ひこうき雲》。
このナンバーは、ピアノとソプラノだけの伴奏でしみじみと。
改めて名曲だよな~と思いました。

そして、CAMARUさんの歌入りの《ハウ・ハイ・ザ・ムーン》。
スキャットはありませんでした(笑)。
この曲を聴くと、いつもスキャットを期待してしまうのは『エラ・イン・ベルリン』の聴き過ぎか?(笑)

CAMARUさんよりヴォーカルの発声方法についての解説があり、なぜか(?)演歌コーナーに突入。
《石狩挽歌》がはじまった段階で、おっと時間切れ。

申し訳ないと思いつつも「J'z Brat」を後にしました。
というか、べつに演歌は嫌いじゃないけれども、「J'z Brat」の店の雰囲気に演歌はあんまし似合わないよな~と、思いました。

なので、引き際としてもちょうどいいタイミングだったかも。

でも、CAMARUさんの歌や、これを選曲した水岡君のセンスがイヤになって退席したわけじゃないからね~。

水岡君、最後まで観れなくてゴメン!

▼水岡君のリーダーアルバムです。

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