森高ブルース
2017/05/19
森高千里といえば、《今度私どこか連れていって下さいよ》や、《私がオバさんになっても》など、ちょっと風変わりであるかもしれないけれども、ある意味、かなりコテコテのアイドルソングばかりを歌っている歌手だという先入観をお持ちの方もいらっしゃるかもしれないが、じつはブルースも歌っている。
《ザ・バスターズ・ブルース》と《ザ・ブルー・ブルース》は、少なくとも形式の上ではブルースだ。
それも、スリー・コードの進行ではなく、モダン・ジャズでは最も一般的な「ツー・ファイブ」の流れを取り入れた洗練されたブルースで、キーもジャズのジャム・セッションにおいて最も使用頻度の高い「F」が選ばれているところがニクい。
歌詞の内容は他愛もない「ゴキブリ出ていけソング」と「浪人生を小馬鹿にしたソング」なのだが、ブルースの「形式だけ」を拝借した日常生活雑記風に小気味良くまとまっていると思うし、なにを隠そう私のカラオケ愛唱曲(笑)。
もちろん、「形式」は「ブルース」ではあるけれども、「ハート」や「スピリッツ」の部分は、まったくもって「ブルース」を感じない。
この人を食ったようなところが、個人的にはツボ。
これほど見事に、本質の部分を「漂白」してくれたブルースは他にないと思う。
▼《ザ・ブルー・ブルース》収録の『ロック・アライヴ』
ROCK ALIVE
記:2000/07/03