マイルス・デイヴィス写真集『No Picture!』/内山繁
「撮るな!」
まずタイトルがいい。
「ノーピクチャー」ですからね。
そして、それを意味する「撮るな!」が帯にデカデカと。
この本の著者の内山繁氏が、実際にマイルスに「No picture!」と実際に言われたそうですが、なんだ、マイルスってルックスどころか、言葉も絵になるな。いや、文字になる(キャッチコピーになる)。
表紙は黒バックに浮かび上がる黒いマイルス。
インパクト満点です。
いやでも手にとってページをめくってみたくなるフォトブックですね。
やっぱりマイルスには黒が似合うな。
そして、手にとってみると、80年の復帰後のマイルスの写真がわんさかと。
眼光ギラリ。
怖い!
やっぱり存在感が違いますね。
何かある
私がジャズに興味を持って以来、渋谷の「スウィング」というジャズの映像を大音量で流しているジャズ喫茶に入り浸っていたんですが、その頃、よく流れていた映像が、カムバックしたマイルスが来日し、新宿の広場で行ったライブの映像でした。
NHKが放送した番組の録画だったんだけど、当時はマイルスたちが演奏している音楽の内容はさっぱりわからなかった。
ただ、「PEPE」と書かれた白い帽子をかぶり、ステージをウロウロと歩きながらトランペットを吹くマイルスの姿を見ていると「何かある」と直感的に思ったものです。
「スウィング」を訪れるたびに、人気の映像でリクエストが多かったのか、よく「マイルスin新宿」のライブ映像はよく流れていたので、そのたびによくわからないながらも、見ていたものです。
なので、私にとってのマイルス体験の原点は、このあたりの時代のマイルスなんですね。
そして、まさにこの時期の生き生きとしたマイルスの姿が封じ込めらた写真集が、この『ノーピクチャー』というわけです。
その時にマイルスが来日した時の音を聴きたいという方は『マイルス・デイヴィス・ライヴ・イン・ジャパン 81』に収録されていますが、ちょっと高いよな~と思った方は、演奏場所はニューヨークやボストンでの音源も混ざっているけれども、『ウィ・ウォント・マイルス』を聴けばよろしいかと思います。。
これらライブ音源を聴きながらページをめくると、さらに気分が盛り上がること請け合い!
小川隆夫氏との対談
巻末には、内山氏とジャズジャーナリスト(ジャズ評論家という肩書きではなく、最近はジャズジャーナリストという肩書きになっていますね)の小川隆夫氏との対談も収録されています。
お二人ともマイルスとの思い出、裏話をたくさん語っています。
『となりのウイントン』で語られたウイントン・マルサリスとのエピソードといい、マイルスとのエピソードといい、本当、小川さんは、ジャズの美味しい体験の生き字引のような方です。
やっぱり、学生時代にニューヨークに留学していたという体験がものすごく生きていますね。
しかも、アート・ブレイキーをはじめとした、ジャズの巨人たちが在命中で、しかもフュージョンに席巻されていたため死に体も同然だったアコースティックジャズがウイントンら若者たちの活躍で息を吹き返している時期のニューヨークでしたから、留学していたタイミングも非常に良い時期だったと思われます。あと住む場所も良かったですよね。
アート・ブレイキーやウイントン&ブランフォード兄弟が身近にいて気軽に交流することが出来る環境だっということも素晴らしいですね。
幾度にもわたるマイルスの取材体験を語られていますが、あのおっかなそうなマイルスが見せるお茶目な一面も語られていて、読んだ後に再び写真を見ると、感慨もひとしお。
やはり写真から醸しでるマイルスのポーズ、表情には「何かある」と思わせるものがありますね。
記:2017/02/10