ノー・ウェイヴ/ジェームス・ブラッド・ウルマー

   

迫力、骨太演奏

ごりごり、べきべき。

ぶちゃっ!べきょっ!

アミン・アリのエレクトリック・ベースの音を擬音で書くと、こんな感じになる。

巨大な大出力のエンジンが、アイドリングをしているかのごとく低く唸る1曲目の《ターン・テーブル》。

リズムからズレて、メロディが突如スピードアップするウルマーのギターと、重量級のデヴィッド・マレイのテナーサックスの引力に引き込まれることなくリフのテンポをキープする様が頼もしい3曲目の《ボディ・トーク》。

いやはや、この音色はファンクにして、パンク。

へヴィにして、ハードコア。

強い音のアタック感、それでいてヌルりとヌメった感触。

ときおり、グサッ!ともくるこの迫力。

突き抜けて、尖がりまくっている、アミン・アリの変態ベースを聴けるだけでも私は幸せ。

アミン・アリのほかにも、

ジェームス・ブラッド・ウルマー(ギター)
デヴィッド・マレイ(テナーサックス)
ロナルド・シャノン・ジャクソン(ドラム)

と、「4ビート命!」「スタンダード命!」な人からしてみれば、卒倒しそうな、音の暴力団というか暴走族というか、ようするにヤバい人たちの集団、ミュージック・リベレーション・アンサンブル。

彼らの発する音は、どこまでも挑発的で、不穏な空気を撒き散らす。

しかし、ウルマーは、さすがオーネット・コールマンの「ハーモロディック理論」を継承するギタリストなだけあって、放たれる音は、重いウネリとともに、どこか自由な軽やかさも感じられる。

もっとも、沸騰寸前のこの凝縮された音塊は、不用意に触れると火傷する覚悟も必要かもしれない。

この沸点寸前サウンドを、グツグツにして、妖しい雰囲気を加味しているのは、アミン・アリのベースの貢献度が高いことはいうまでもない。

エッジの立った濃縮度の高いロックが好きな人にも、オススメなアルバムだ。これを聴くときは、できるだけボリュームを上げてお聴きになることをお勧めしたい。

小ボリュームだと、なんだか惨めでしみったれた気分になる。大音量に同化しなくてはいけない。

小音量では、この特濃激辛サウンドに同化できずに、サウンドが自分のスケールの小ささを客観的に浮き彫ってしまうことになり、却って日常の瑣末な出来事が頭の中をグルグルとめぐりはじめるのだ。

1980年、ドイツ・デュッセルドルフでのレコーディング。ミュージック・リベレーション・アンサンブル名義の数枚の中では、もっとも気骨のあるアルバムがコレだ。

記:2009/01/03

album data

NO WAVES (Moers Music)
- James Blood Ulmer (Music Revalation Ensemble)

1.Time Table
2.Big Tree
3.Baby Talk
4.Sound Check

James Blood Ulmer (g,vo)
David Murray (ts)
Amin Ali (el-b)
Ronald Shannon Jackson (ds & per)

1980年6月

 - ジャズ