波留の「のどスぺ!」広告 in 新宿西口地下広場
広告ウォッチングは楽し!
以前、出版社の宣伝部で長いこと広告の仕事をしていたためか、今でも広告ウォッチングは大好きです。
ですので、ときおり繁華街のビルボードや企画色の強い広告を実験的に行えるスペースに赴き、広告物を鑑賞することも趣味の一つです。
やっぱり、広告って面白いし、知恵とセンスと労力の結晶体のようなものなんですよね。
最終的にひとつのカタチになるまでの過程には、度重なるリサーチがあったり、喧々諤々の議論があったり、各関係者への了解を取り付けたりと、まあ面倒なこともたくさんあるわけですが、これらのすべてを経て最終的にひとつの作品として昇華され、それが世に出たときの嬉しさというものは筆舌に尽くしがたいものがあります。
それに、広告のアイデア出しなどの打ち合わせをデザイナーやコピーライターの方々たちとするのが私は大好きで、これを「仕事」だと思ったことは一度もありません。
だからといって「遊び」というわけでもないのですが、今まで自分が吸収し培ってきたものをアウトプットしたり、磨いたりすることや、打ち合わせ相手の思いもよらぬ視点や切り口に驚いたり感心したりすることにより、気持ちの良い知的興奮を味わえるんですね。
だから、面白い広告に出会うと、その作品が出来上がるまでの背景に思いを巡らせることが好きなのですね。
新宿西口地下広場の広告スペース
私がよくウォッチングに出かける場所は、やっぱり渋谷と原宿ですかね。
都内のみならず、地方から多くの上京者が集まるこの街は、この街だけしか掲出しないピンポイントな実験食の強い広告もあるからです。
そして、ベタですが、新宿。
渋谷や原宿ほど実験色の強い広告は少なく、比較的メジャーかつフラットなものが多いのですが、やはり新宿駅は世界一の乗降者数の駅とギネスブックからも認定を受けたほどのターミナル。
このエリアに掲出されている広告を見れば、「今」がなんとなくわかり、「時代の気分」のようなものを味わえるような気がするんですね。
新宿といってもかなりエリアは広いのですが、私が個人的に注目しているエリアは、新宿西口地下広場です。
横10mはあるんじゃないかと思われる長方形の電光看板と、その周囲に何本も立つ柱に埋め込まれる電光看板。
円筒形の柱は、様々な方向から歩く人に、色々な広告をウォッチングできるように何通りかのバリエーションが存在しており、歩きながら何パターンかの広告の図案を楽しめるわけです。
少し前に掲出されていたTBCの広告はインパクトありましたね。
ローラの「ビジンな私は努力している」というコピー、そしてローラのビジュアルがピタリと融合して、なかなか印象深いものがありました。
で、最近注目なのが波留の「のどスぺ!」。
「キリン のどごしスペシャルタイム」のビジュアルなのです。
頭が八分音符
個人的には、この新しいビールにも、女優の波留にもさほど興味はないのですが、4分割された「の」「ど」「ス」「ペ!」の文字を大胆に配したレイアウトにまずはインパクトを感じました。
そして、うきうき楽しい気分を象徴するかのような8分音符(♪)の「旗」の部分を波留のアタマにちょこんと乗っけているセンスが秀逸!
ここの部分ですね。
8分音譜のような飾りをアタマにつけるだけで、ポップな軽やかさを増強させている。
♪ね。
こういうセンスが好きなんですよね。
というか、「頭にちょこんと音符のマークつけてみましょうか」「いいですねぇ」みたいな打ち合わせが交わされていたのかな、なんて想像を巡らせるのが好きなんですね。
CMだと、おいしくて頭から音符の旗が生えてくるという演出でしたが、ビジュアル的なインパクトはそれほどないにしても、この「ちょいひと工夫」が良い。
そういうちょっとした「イタズラ」を打ち合わせ中にアイデアで出すこと、私自身大好きでしたから。
こういう遊び、息抜き的ビジュアルが良い
それと、ちょっとした「息抜き」的なビジュアルが要所要所に掲出されているのも良いですね。
すべての広告ビジュアルがビールや波留で埋め尽くされていたら、ちょっとクドイというか、宣伝宣伝したゴリ押し感が強くなってしまいますから。
また、波留が登場しないビールだけのビジュアルもありました。
この2種類のビジュアルがところどころに配列されれば、西口広場が波留一色で埋め尽くされることによるクドい印象が避けられる上に、「New!」とビールの2種類のビジュアルがあれば、「新しいビールが発売された」ということを無理なく印象づけることが可能なんですね。
「こういうビジュアルもところどころに挟んだほうが効果的なのでは?」「それもそうだね」なんて、打ち合わせをしたのでしょうか。
なにより製作者のリズム、テンポの良さが伝わってきますよね。
やっぱり広告ウォッチングは面白いです。
記:2017/04/22