ニューヨーク・シティ R&B/セシル・テイラー

   

シェップ参加で倍加する野性味

デビューして間もない、アーチー・シェップの初期のプレイを聴ける。

まだまだ、自己の衝動をコントロールをする術を身に着けているとはいえず、また、テイラーの高度に構築された世界に溶け込むだけの経験値は当然足りない。

しかし、テイラーの硬質なサウンドに「野性味を加味する」という一点においては、強烈な光彩を放ち、かつ、彼の起用は成功しているといっても良いだろう。

もがいているような、解決の糸口を探るような「ふがふが」さ加減が、きめ細かなテイラーのピアノと良い対比をなしている。

ラストのエリントン・ナンバーは、ホーンの宴とでもいうべきか。

クラーク・テリーや、スティーヴ・レイシー、ラズウェル・ラッドと新旧入り混じったホーン陣のアンサンブルは、原初のプリミティヴなジャズの原型を想起させる。

と同時に、高度にコントロールされた要素もバランスよく入り混じっており、さながら、高度なテクノロジーで管理された近未来の動物園のよう。

原始と現代が混然と一体化した不思議空間が繰り広げられている。

この曲を取り上げ、かつビッグバンドとまでにはいかないにせよ、この曲のみ、複数のホーン奏者に演奏させているところからも、エリントンに心酔するテイラーの一面を伺えるという点で興味深い。

それにしても、ネイドリンガーのベースワークはなかなかだ。

地味かもしれないが、ノリの良さと反応の良さは心地よい。

さすがにテイラーと同列に名前がクレジットされるだけのことはある。

この円を描くように大きく低音を描くベースに、多角形的なセシル・テイラーのピアノが絡むと、音のバランス的にも良い按配。

多少ハードな演奏も、ベースの柔軟さゆえ、それほど緊張感に満ちたガチガチの内容ではない。

知的さとプリミティヴさが同居した、テイラーの隠れ名作だ。

記:2007/08/01

album data

NEW YORK CITY R&B (Candid)
- Cecil Taylor

1.O.P.
2.Cell Walk For Celleste
3.Cindy's Main Mood
4.Things Ain't What They Used To Be

Cecil Taylor (p)
Clark Terry (tp) #4
Roswell Rudd (tb) #4
Steve Lacy (ss) #4
Archie Shepp (ts) #2,4
Charles Davis (bs) #4
Buell Neidlinger (b)
Billy Higgins (ds,tympani) #1,3,4
Dennis Charles (ds) #2

1961/01/09-10

 - ジャズ