オープン・セサミ/フレディ・ハバード

   

ティナ・ブルックスの名盤でもある

フレディ・ハバードの初リーダー作で、彼を代表する名盤の1枚ではあるが、ハバードの諸作品をひととおり聴いて、んで、結局は、ここに戻ってきて、「ああ、やっぱりエエなぁ」としみじみ感じることが出来る1枚なのかもしれない。

というのも、テナーのティナ・ブルックスの魅力もたっぷりと凝縮されたアルバムでもあるからだ。

哀切こもった彼のプレイを味わえるだけではなく、このアルバムの「顔」とでもいうべき《オープン・セサミ》と《ジプシー・ブルー》の2曲もティナの作曲なのだ。

元気一杯の躍動感。
と同時に哀愁がいい感じに封じ込められている《ジプシー・ブルー》がいいんだよね。

一聴、ホレス・シルヴァーの曲なんじゃないか?と錯覚するほと曲調。

それは、シルヴァーテイストの、いかにもなエキゾチックなテイスト漂うベタでキャッチー過ぎるメロディが、テーマのラテンタッチのリズムと調和しているところが、シルヴァーが作り出すラテンタッチの曲の作風を彷彿させるからだろう。

しかし、テーマのメロディそのものよりもハバード、そしてティナ・ブルックスの良い面をグッと引き出している曲想でもあり、ティナは、プレイはもとより、曲を書かせてもマイナータッチの冴え渡るジャズマンだったということが分かる。

ティナの青黒く音色にまとわりつく哀感がぴったりと曲の雰囲気にマッチしているのだ。《ジプシー・ブルー》だけを聴けば、もしかしたら、このアルバムはティナの名盤、『トゥルー・ブルー』の兄弟盤なんじゃないかと思ってしまうほどだ。

もちろん、リーダーのハバードのトランペットも素晴らしい。

輝かしく、確信に満ちたトランペットの音色。滑らかなフレージングに加えて、出るところは出る大胆不適さ。

これぞ、ジャズマンに求められる重要な資質だと思うが、ハバードは、すでに最初からそれを身に着けていた。

オープン・セサミ。

つまり、開けゴマ!

この呪文をとなえずとも、彼のラッパが、自然に名演へのトビラを開けてしまっているではないか。

サム・ジョーンズの重心の低いベースが、思い切りのよい若者をボトムからガッチリと支え、哀切かつメロディアスなティナのテナーも頑張る。

冒頭の《オープン・セサミ》に血湧き肉踊り、《ジプシー・ブルー》のマイナー調の演奏に痺れ、シンプルなブルース《ワン・ミント・ジュレップ》に心躍る。

まさに、どこを切っても心躍り、力強さに漲った1枚だ。

記:2006/07/28

album data

OPEN SESAME (Blue Note)
- Freddie Hubbard

1.Open Sesame
2.But Beautiful
3.Gypsy Blue
4.All Or Nothing At All
5.One Mint Julep
6.Hub's Nub

Freddie Hubbard (tp)
Tina Brooks (ts)
McCoy Tyner (p)
Sam Jones (b)
Clifford Jarvis (ds)

1960/06/19

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