パートナーズ/ポール・ブレイ&ゲイリー・ピーコック
人生の渋みを感じさせる粋な男達の語らい
CDオビに書いてあるキャッチコピーに惹かれた。
「人生の渋みを感じさせる粋な男達の語らい」
正直、このアルバムを購入したのは、この一文があったから。
そしてパーソネルが、ポール・ブレイにゲイリー・ピーコック。
この名前の組み合わせだけでも、なにやら静謐で哲学的、そのくせ、そこはかとなくエロティックな上に、一筋縄では行かないしたたかさをも秘めた音空間が想像出来てしまうではないか。
耽美的な音空間
このアルバム、単純にピアノとベースのデュオのアルバムではない。
ベースソロが6曲、ピアノソロが4曲。そして、残り5曲がデュオという構成になっている。
およそ3分の1ずつが違うフォーマットでの演奏。
しかし、不思議なことに、ゲイリー・ピーコックのベース・ソロも、ポール・ブレイのピアノ・ソロも、このアルバムの「気分」を酵成させるのに一役買っている上に、アルバム1枚の不思議な流れを形作っている。
オーネット・コールマン作曲の《ラテン・ジェネティクス》を除けば、すべて彼らのオリジナルで固められている。
そして、ほとんどの録音が一発録りなのだという。
この奇妙に静かで、どんどん沈んで生きそうな耽美的な音空間は、1曲の演奏がどうのというよりも、1枚を通しでのトータルの「雰囲気」で味わうべきだろう。
深夜に一人でじっくりと聴けば、日常とは異質な別世界に誘ってくれることだろう。
有名ジャズ喫茶には不向き?
ところで、以前、あるジャズ喫茶でアルバイトをしていた大学の後輩に、このアルバムはいいぞ、と勧めたことがある。
さいわい、後輩のバイトしているジャズ喫茶のレコード室には、このアルバムがあった。
この店のマスターも、このアルバムの《ラテン・ジェネティクス》を推薦曲に挙げ、“これまでに聴いたことのない種類のジャズの名曲”と何かの本で書いていたので、いっちょ聴いてみるかと、マスターがいない時間帯にこのアルバムをかけてみた後輩。
そうしたら、普段はほとんど店にはいないマスターがたまたま店にやってきて、「キミぃ、こんなの店でかけちゃダメだよ」と言いながら、CDを途中で中断させ、違うレコードに取り替えてしまったそうだ。
「やっぱり、こういうのかけなくちゃ、うん、いいねぇ、コレは」と悦に入って聴いていたレコードは、バド・シャンクの『バド・シャンク・カルテット』だったそうで。
ピーンと張り詰めた緊張感は、一人で聞く分には良いのかもしれないが、ジャズ喫茶にとっては、営業向きではないサウンドなのかもしれない。
内容の良い悪いは別として(もちろん演奏内容は素晴らしい)、たしかに大音量でかけると、空間がピーン!と凍りつきそうなサウンドではある。
でも、その時の店内には、お客さんがいなかったらしいが……。
記:2002/07/09
album data
PARTNERS (NEC Avenue)
- Paul Bley & Gary Peacock
1.Again New
2.Pleideas Skirt
3.Octavon
4.Latin Genetics
5.Workinoot
6.Afternoon Of A Dawn
Part 1
Part 2
Part 3
7.Hand In Hand
8.Satyr Satire
9.Lull-A-Bye
10.Twitter Pat
11.Who's Who Is It?
12.Gently,Gently
13.Majestique
14.Pot Luck
15.No Pun Intended
Paul Bley (p)
Gary Peacock (b)
1989/12/18