ポール・チェンバース・クインテット/ポール・チェンバース
ベースが前に出すぎず、あくまでアンサンブル重視
もしかしたら、名盤『ベース・オン・トップ』を上回る内容かもしれない『ポール・チェンバース・クインテット』。
パーソネルが面白い。
ドラムがエルヴィン・ジョーンズなのだ。
チェンバースとエルヴィンというリズムコンビネーションって結構珍しいんじゃないか?
チェンバースで思い浮かぶドラマーって、どうしても、アート・テイラーやフィリー・ジョー・ジョーンズなどの名前が真っ先に思い浮かんでしまうからね。
エルヴィンは、控えめにリーダーのチェンバースを立てる役に徹してはいるし、音のバランスも、ドラムの音は、かなり奥のほうに引っ込められている。
しかし、粘りのあるブラッシュワークと、さり気ないシンバルでのニュアンス作りは特筆もの。この邪魔にならないソツないドラミングは特筆に価する。
もちろん2人のリズムコンビネーションも申し分ない。
ホーン陣は、トランペットにドナルド・バード。
テナーサックスにクリフ・ジョーダン。
うーん、渋い!
で、トミー・フラナガンの趣味の良いピアノが脇を固めるという寸法。
なかなか、オイシイ組合せだ。
もちろん、リーダーはベーシストのポール・チェンバースだが、『ベース・オン・トップ』ほど、ベースが前面に出た内容のアルバムではない。
ベース・ソロに焦点を当てず、「ゴキゲンな演奏を生み出す屋台骨としてのベースをご鑑賞ください」というのがこのアルバムの趣旨なのだろう。
彼のベースを全面的にフィーチャーしたナンバーは《朝日のように爽やかに》ぐらいなもので、他の曲は、あくまでアンサンブル重視な内容。
もちろん、普通の演奏よりはベースソロが長いかな?という演奏もあるし、ソロの順番がベースが最初だったりする曲もあるが、それはベーシストがリーダーのアルバムゆえ、仕方の無いことでしょう。
ただ、1曲目の《マイナー・ランダウン》冒頭のベースにスポットをあてたアレンジは、チェンバースのベースワークにスポットを当てた内容で、早くもチェンバースの世界にのめりこむ格好の橋渡しとなっている。
非常に丁寧な演奏、かつ躍動感のある4ビートを味わえる好アルバムだ。
記:2006/07/05
album data
PAUL CHAMBERS QUINTET (Blue Note)
- Paul Chambers
1.Minor Run-Down
2.The Hand Of Love
3.Softly As In A Morning Sunrise
4.Four Strings
5.What's New
6.Beauteous
Paul Chambers (b)
Donald Byrd (tp) #1,2,4,7
Clifford Jordan (ts) #1,2,4,7
Tommy Flanagan (p)
Elvin Jones (ds)
1957/05/19