ピアノ弾きに戻るかもしれないという、うっすらとした予感

      2016/01/30

kenban

楽器やってない人にとってはチンプンカンプンな話かもしれませんが、ギタリストは、「A」とか「E」とか「G」のような、開放弦を多用できるキーが好きなんじゃないかと思います。

だいたい、ロック系、ブルース系のギタリストとセッションするときのキーって、だいたい上記3つのキーが多い。

テナーサックスやソプラノサックスの人は、「B♭」が好きなんじゃないかな。

アルト、バリトンサックスは「E♭」。

いわば、「ドレミファソラシド」の運指のキーだからね。

ジャズやっている人だと、ピアノもギターもベースも管楽器も、だいたい最大公約数的落ち着きどころは、「F」とか「B♭」とか「E♭」あたりなのかな?

つまり、これらのキーはそれほど難しくない運指な上に、スタンダードやブルースなどの曲にも実際、このキーが多いという理由があります。

だから、ジャムセッションでは、「《ボディ・アンド・ソウル》をやろう!」なんて決め打ちがない限りは、だいたいブルースだと、上記のキーが多いし、やる曲も上記のキーの曲が多いです。

だから、私は「F」、「B♭」、「E♭」あたりのキーが一番好きです。

響きも好きだし。

逆に嫌いなのキーが、「E」とか「A」とか「G」とか「D」とか「B」なんですね。

これは、ロック系のギタリストにとってはラクなキーなんだろうし、ベーシストにとってもE、A、D、Gなんてのは開放弦も多めに使えてラクだし、チョッパーやっている人にとってはありがたいキーなんだろうと思います。

ところが、私、運指のラクさとはまた別の次元で、これらのキーってなんだかあんまり好きじゃないんですよね。

理由は、ベースやる前のピアノやってた時代にさかのぼるのだけれども、上記キーが持つ独特の色彩感、妙に軽くて明るい感じがあんまり好きじゃない。

これはほんと、私の直感というか感覚の好き嫌いの問題なので、うまく説明できないのがモドカしいのだけれども、どうも、私、昔から「#系」のキーって、演奏するときはすごく違和感を感じているんです。

12音階は、どの音から初めても、同じ間隔、音の距離をたどれば、どのキーも相似形的に同じ音に聞こえるはずではあるのです。原理的にはね。

ところが、やっぱり、各キーごとに持っている色彩というか、音のオープンさや、軽さ、重さっていうのって、まるっきり違うように感じる。こう感じる人ってきっと多いと思うんだけれども、私の場合は、どうも#系のキーがあんまり好きじゃなかったんですよ、昔から。

管楽器の特性に合わせてという理由が大きいのでしょうが、ジャズの曲は「♭系」の曲が多い。

逆に、ギターの特性に合わせてなんだろうけど、ロックには「♯系」の曲が多い。

もちろん、例外もいっぱいあるけれどもね。

もちろん、これは、私の個人的な音の色彩感覚に基づいての話だから、主観100パーセントなんだけどさ、「♭系」のキーは、なんとなくダークな響きがする。

反対に、「#系」の響きはブライトに感じる。

ピアノを習っていた幼少時より、私は「♭系」のキーに親近感を持ち、「#系」に生理的違和感を微妙に感じていたのは、もしかしたら、将来的にジャズを好きになる体質だということが運命づけられていたのかもしれない。

となると、いつまでたっても好きになろうと努力をしても、なかなか多くのロックを心底好きになりきれなかった理由にも頷けます。

もちろん例外の曲はいっぱいあります。

「#系」の曲だって好きな曲は多いよ。

ただ、一般的な大雑把なわたしの好みの傾向を分析すると、って話なんだけれどもね。

音楽そのものよりも、自分がピアノを弾いているときの肉体的な違和感や気持ちよさが、私の音の感受性の重要な部分を占めているようで、自分のピアノを弾いているときの身体感覚とそれに付随する音の好き嫌いが、音楽を受容する感性のどこかにフィルターのような装置として厳然と存在しているのかもしれないです。

よくわからないけど。

だとすると、ベースだ、ベースだと言いながら、ここ十数年ベースばっかり弾いてピアノはほとんど弾かないし、ほとんど弾けなくなってしまっている私でも、やっぱり自分の根っこのベーシックな部分はピアノなんだなぁと思ってしまいます。

たしかに、ベースラインを考えるときも、頭の上に弦ではなく鍵盤が浮かぶことが多いし、本質的にもしかしたら私はピアノ弾きなのかもしれない。

今は当然ベースのほうが弾いていてシックリくるけれども、それは単なる慣れと惰性の問題かもしれず、もし、ピアノの感覚を取り戻そうと、必死に1ヶ月ぐらいリハビリをすれば、私の体はまたピアノにピッタリと吸い寄せられるのかもしれない。よくわからないけど。

もちろん今はベース弾いている時間が楽しいのだけれども、うすうすと、しかし力強い確信もともなった予感がなんとなく数ヶ月前からあります。

あと10年したら、オレはピアノ弾きに戻っているだろう(もちろんアマチュアで)、ということです。

そのときのオレは、いったいどういうピアノを弾いているのだろう。

ジャズじゃないやな、きっと。

ジャズは聴くだけでいいや。

それに、バド・パウエルの一部のピアニストの演奏を除けば、ピアノトリオってフォーマットはあんまり好きじゃないし(ピアノレスのフォーマットのほうが好きだったりする)。

ようわからんけど、今、アタマの上は、白と黒の鍵盤がグルグル回っているのです。

記:2007/10/21

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