バド・パウエルの重たいピアノ
text:高良俊礼(Sounds Pal)
バド・パウエル 音色
「モダン・ジャズ・ピアノの父」と呼ばれるバド・パウエル。
とにもかくにも1950年代以降のジャズをやるピアニストは、軒並み彼の影響を受けてると言っても過言ではないが、そういう体系的なことはさておき、パウエルぐらいの巨人になると「この人ならでは」の味わいというのがある。
それは何と言っても、耳にズドンと落ちて心に侵食する、重たく湿った音色だろう。
バド・パウエル 中期以降
彼はドラッグやアルコール、その他様々な要因によって精神を病んでしまっていたという。
作品として残された音源を聴くと、確かに超絶技巧を駆使しまくって、鮮やかなフレーズを切れ味鋭く繰り出しまくる作品と、もつれる指で必死に何かを生み出そうともがいているかのような作品とに分別されるが、今日聴かれる彼の演奏は、ほとんどが後者、時期でいえば中期から晩年の演奏だ。
音楽家の場合は、往々にして「デビュー当初は冴えてたけど、その後はヤク中でボロボロ・・・」というような評がなされるものだが、バドの場合は一番人気の《クレオパトラの夢》をはじめ、多くのファンから支持を得ているのが中期以降の作品だったりするのだ。
大きな理由としては、いわゆる「中期以降」から、彼はその超人的なテクニックと引き換えに、何とも憂いを帯びたメロディ感覚と、一度聴いたら忘れられない「ココロの重し」のような音色を手に入れたんだと思う。
バド・パウエル Vol.3
さて、バド・パウエルのアルバムについて。
初心者の方は、《クレオパトラの夢》が収録されている『ザ・シーン・チェンジズ~アメイジング・バド・パウエル Vol.5』もいいが、この『Vol.3』もなかなかオススメだ。
2曲目の《ブルー・パール》、そしてバッハの曲を猛スピードで弾き、さらにブルージーな味付けを加えた《バド・オン・バッハ》で、彼の「重たい狂気に充ちた音色」の妙が存分に堪能出来る。
更に、後半でカーティス・フラーののほほんとしたトロンボーンが参加してくる。彼のトロンボーンの「なーんも考えてない和やかな演奏」が、全体に良い意味での中和剤として効いている。
記:2014/09/26
text by
●高良俊礼(奄美のCD屋サウンズパル)