アット・ザ・プレリュード vol.1/レッド・ガーランド
ゴキゲンなライブ盤
レッド・ガーランドのライブの決定盤といえば、やっぱり『アット・ザ・プレリュード』でしょう。
快楽、極上、リラックス。
心が弾み、同時に和む。 ひたすらスインギーで、雰囲気も抜群。
そして、キチンと過不足なくピアノトリオ。
適度なスリリングさと、期待を裏切らない安心感。
このような要素を矛盾しない形で、満たし、演奏してくれるのが、ピアニスト、レッド・ガーランド。
そんな彼の魅力の集大成というべきライブ盤が、これだ。
ライブ演奏ということもあり、客の反応もきっと良かったのだろう、
ここでのガーランドはノリにノッている。
パーソネルを見ると、ドラムもベースも、それほど名の知れたジャズマンではない。
ローカルで雇った地元のジャズマンたちのようだが、むしろ、彼らが繰り出すステディでありながらも、しっかりとグルーヴするリズムの上でのほうが、ガーランドも本領を発揮できるのかもしれない。
たとえば、《プレリュード・ブルース》のコロコロと転がるようなトリルが気分良し。
ガーランドのピアノは、コロコロした玉のような音色とフレーズがトレードマークのひとつなんだけれども、《プレリュード・ブルース》で執拗に繰り返される「コロコロ・トリル」が、これ以上繰り返すと下品の三歩手前という按配がとてもゴキゲンなのだ。
ロックやブルースのギターソロにもありがちかもしれない「演出」かもしれないけれど、このような単純なことの繰り返しのほうがライブではウケるのでしょうね。
とにもかくにも、レッド・ガーランドのピアニストが持つ「良い部分」が、「良い形」で現れた演奏ばかりが集められたライヴなのだ。
ご機嫌なタッチで有名曲を次から次へと軽やかに仕上げてゆくガーランド。
多少、ワンパターンに感じなくはないが、ライブの熱気がそれを補って余りある。
一度でもいいから、演奏に間近に接してみたかったと思わせるライブ音源の1枚だ。
ジャズマニアは、コアな人なればなるほど、ガーランドのことを軽視する傾向があるけれども、私はこういうピアニストほど大事に聴いてゆきたい。
コーヒーショップでパソコンのキーを打ちながらiPodで聴いても楽しい音源だということにも最近気がついた。
周囲のノイズとガーランドのピアノがマッチするのだ。
そのうえ、キーのタッチに加速がかかり、心地よい気分でどんどん原稿がかけてしまうのだ。
もちろん、演奏の内容もきちんと頭にはいってくるし、なおかつ、別のことも同時進行で考えられるという、BGMを超えたBGMたりうる優れた演奏なのだ、『アット・ザ・プレリュード』は。
記:2006/03/12
album data
AT THE PRELUDE vol.1 (Prestige)
- Red Garland
1.Satin Doll
2.Perdido
3.There Will Never Be Another You
4.Bye Bye Blackbird
5.Let Me See
6.Prelude Blues
7.Just Squeeze Me
8.One O'clock Jump
9.Marie
10.Bohemian Blues
11.One O'clock Jump (alternate take)
12.A Foggy Day
13.Mr.Wonderful
Red Garland (p)
Jimmy Rowser (b)
Charles "Specs" Wright (ds)
1959/10/02 at the Prelude Club,NYC