戦前ブルース入門の決定版!『RCAブルースの古典』
画集や写真集をめくる感覚で
バイブルですね。
この2枚組のCDは。
コンピレーションアルバムの『RCAブルースの古典』は、折に触れて聴いています。
ただ、勉強しようとか、ルーツを知ろうとか、そういう意思では聴いていない。
もちろん、ブルースの勉強をしようと思えば、このCDに付属している詳細なライナーノーツを読めば、なかなか読み応えもあるし、ブルースの知識も増えること請け合い。
ただ、このアルバムは古いブルースの百科事典のようなものかもしれないけれども、調べたり勉強するためのものではなくて、パラパラとめくって豊富な図説とか写真やイラストを楽しむノリが正しい聴き方なのかもしれない。
だって、収録されているすべてのナンバーが、1回や2回聴いた程度では、理解できない可能性も高いし、すべての曲を好きになれるわけでもない(そういう人も中にはいるでしょうが)。
そういった意味では、私にとってはモノクロの写真集、あるいは画集を見る感覚に近いのかもしれない。
音のタイムカプセル
私が戦前のカントリーブルースに惹かれる理由は、歌詞とかフレーズではなく、漠然とした全体の空気感なんだよね。
ものすごく遠い昔から届いた音のメッセージ。
距離も時間も想像もつかないほど遠く離れた異国の地の、触れたことのない空気が、ギターと歌の音がタイムカプセルの役割になって運んでくれる。
いや、音の缶詰なのかな?
聴いた瞬間にこの缶詰が開封され、何十年も昔の空気が私の周りを包んでくれる。
この空気に浸り、一言「遠いなぁ…」、とため息。
時間の感覚が明らかに変わってくるのです。
戦前ブルースというと、何かと研究・分析の対象にされやすいけれども、そういった「お勉強」な要素とは無縁の聴き方、つまり「雰囲気聴き」も良いんじゃないかと思います。
そして、何度か聴いているうちに、必ず自分に合った曲が見つかる。
そうしたら、その歌を歌っているブルースマンを深堀りしていけば、少しずつブルースの楽しみが広がっていくわけです。
戦前ブルースを聴く効用
べつにメリットを求めて音楽を聴いているわけではないんだけれども、強いて言えば、戦前ブルースを聴くことによる「効用」のようなものがある。
それは、あくまで私自身の場合なのだが、ほんの少し、ものの考え方や視野が長期目線になれるということ。
それに加えて、少しだけものごとに寛容になれるということかな。
良い意味で、神経過敏ではなくなり、鷹揚な気持ちになれる。
目先のことにシャキシャキしてもしょーがないんじゃない?って気分になれるんだよね。
悪く言えば、怠け者マインドになっちゃうということかもしれないけれども、ストレスに苛まされるよりは、よっぽどマシだと思いませんか?
1920~40年代のブルースに、ちょっとでも興味を持たれた方は是非!