レッド・ガーランズ・ピアノ/レッド・ガーランド

   


Red Garland's Piano

『Groovy』の姉妹盤

ガーランドの名盤 『グルーヴィ』と同日録音の曲が2曲収録されていることもあり、『グルーヴィ』の姉妹盤ともいえる。

アルバムとしてのまとまりという点では、『グルーヴィ』には一歩譲るかもしれないが、このアルバムの魅力は、味わいのあるジャケ写と、バリエーション豊かな選曲だ。

ちなみに、『グルーヴィ』の同日に録音されたのは、《イフ・アイ・ワー・ア・ベル》と《アイ・ノウ・ホワイ》の2曲。

《イフ・アイ・ワー・ア・ベル》といえば、マイルス・デイヴィスのマラソンセッション4部作の『リラクシン』があまりに有名だが、この録音からわずか2ヵ月後の演奏がこの『レッド・ガーランズ・ピアノ』には収録されている。

大きな違いはなく、むしろ、マイルスの『リラクシン』のレコーディング時に弾いたフレーズがチラリと小出しになるところなど、「あぁ、ガーランドだなぁ」と、この小粋なピアノ弾きのマイペースさと、自分のスタイルを崩さぬある種のプロ意識にニヤリとしてしまう。

自分色の個性

リズムセクションは、いつもの、アート・テイラー(ds)とポール・チェンバース(b)。

二人のリズムコンビネーションは相変わらず素晴らしく、ことチェンバースの牽引力と、テイラーのブラッシュ・ワークは素晴らしい。

個人的には、《サヴォイでストンプ》や《オールモスト・ライク・ビーイング・イン・ラヴ》が好き。

特に、先日、仕事でピーンと張り詰めた状態が数時間続いた後、近所のコーヒーショップで一息ついたときにiPodから流れてきた《サヴォイでストンプ》は、これまで固く張り詰めていた全身の神経と筋肉を一気に解きほぐし、私を丸ごと優しく包んでくれた。

たしかにガーランドのピアノは金太郎飴かもしれないが、金太郎飴と感じさせるほどの「自分色の個性」を持ち続けるピアニストがどれほど今の世にいることか。

変化、進歩もジャズだが、自分の色を持ち、自分の得意のスタイルを、自分が好きなように、弾きたいように弾けるのもジャズマンの贅沢な特権なのだ。

弾きたいように弾く。
すなわち、自由に弾く、ということ。

結果、誰が聴いても「あ、あの人のピアノだ!」とすぐに分かるほどの個性を獲得し、多くの人を楽しませるスタイルで演奏し続けること。

これって、アタリマエのようなことでいて、じつはメチャクチャ難しいことなのだ。

ガーランドは、進歩的なジャズマンではなかったかもしれないが、多くの人を楽しませるスタイルを確かに持っていたピアニストだった。

そして、この事実ひとつだけをもってしても、彼は一流の素晴らしいピアノ弾きだったといえる。

ジャマルとガーランド

なになに?
ジャマルはアーマッド・ジャマルのモノマネ?
シカゴを離れたくないためマイルスの誘いを断り続けていたジャマルの「代用品」がガーランド?

たしかに、ジャマルのスタイルをマイルスから求められ、忠実にそれに応えたピアニストはガーランドではあるが、決してイミテーションでも代用品でもない。

だって、耳の穴かっぽじって聴き比べてごらんなさいよ。

スタイル、アプローチは似ているかもしれないが、二人のピアニストの音、全然違うじゃないですか?

二人とも立派なオリジナリティを持ったピアニスト。

ちょこっと知識をかじっただけで、ガーランドはジャマルのマネだの、B級カクテルピアニストだなどとワケ知り顔でのたまう鼻くそ野郎の耳など、ウンコ耳なのだ。

記:2006/09/09

album data

RED GARLAND'S PIANO (Prestige)
- Red Garland

1.Please Send Me Someone to Love
2.Stompin' At The Savoy
3.Very Thought Of You
4.Almost Like Being In Love
5.If I Were A Bell
6.I Know Why (And So Do You)
7.I Can't Give You Anything But Love
8.But Not For Me

Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (ds)

1956/12/14 #5,6
1957/3/22 #1,2,3,4,7,8

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