路傍の芸/里国隆
濃密に奄美そのもの
「ちょっと前までは、近くの橋とか、路上で演ってたんですよ。我々は地元の人間にとっては、「さっき、近くで演ってたよ」ぐらいな感じで、日常的な風景だったんですね。」
里国隆という「とんでもない歌唄い」のことを教えてくれたのは、本場・奄美大島のCDショップ「サウンズパル」の高良俊礼さん。
奄美出身ゆえ、当然ながら奄美は沖縄とともに里の活動拠点だった。
店で売られていたCDのうちの1枚を何の気なしに購入。東京の自宅に帰ってから聴いてみると……。
すごい。
濃い。
むせ返る。
声が、音が、(私にとっての)奄美そのものじゃないか。
奄美大島の濃密な空気が、里のがなりたてる声と、三味線(あるいは竪琴)の響きとともに雲のように立ち込めてきた。
うっわぁ、やべぇ。
そう、「ソウル(魂)」だなんて手軽で便利な言葉を遥かに超越したヤバくてディープな空気がCDにはパッキングされていたのだ。
それを東京に持ち帰り、何の気なしに解凍してしまった私は、まるで玉手箱を開けてしまった浦島太郎のように腰を抜かし、のけぞり、音そのものが持つ得たいの知れぬ妖気にすっかりパワーを吸い取られてしまったとさ。
老人にならなかただけ、よしとするか…。
いずれにしても、取り扱い注意音源であることには変わりない。
目の前の風景の輪郭をグニャリと変えてしまうほどの強烈な歌パワーが封印されているのだ。
心して聴くべしっ!
記:2009/12/12
収録曲
1. 安来節
2. 草津節
3. 流転
4. 朝花節
5. くるだんど節
6. くるだんど節
7. 大利根月夜
8. 皇国の母
9. 女工節
10. かんつめ節