ロリンズ初期の名盤『ムーヴィング・アウト』を聴こう!
後期のコールマン・ホーキンスのレコードを早回しすると、チャーリー・パーカーそっくりになったという逸話があるが、ロリンズの《ムーヴィング・アウト》の場合は、早回しせずとも、音域の低いパーカーだということが、“一聴”瞭然だ。
とにかく、冒頭1曲目から「快進撃!」という言葉が最もふさわしい。
とめどめもなく流麗に流れ出るロリンズのアドリブは、パーカー・フレーズを吸収しつつも、既に新たな彼だけの境地が芽生えつつあるし、快活なブレイキーのドラムはウキウキした気分にさせてくれる。
ケニー・ドーハムのラッパは、まったく“静かなる男”ではなく、むしろ、やんちゃで元気な男。
エルモ・ホープの水を得たようなピアノソロは、まるで絶頂期のパウエルではありませんか。
とにかく、1曲目の《ムーヴィング・アウト》が聴けるだけでも、「買い」のアルバムだ。
あ、もう一つ、このアルバムの「売り」を忘れていた。
ラストの《モア・ザン・ユー・ノウ》だ。
この曲のみ、パーソネルが違う。
ピアノがセロニアス・モンク、ベースがトミー・ポッターに代わっている。
つまり、アルバム『モンク&ロリンズ』が録音された日に収録された演奏が、この『ムーヴィング・アウト』のラストにポツリと1曲付け足されている感じ。プレスティッジがよくやる手法ですね。
このプレスティッジ編集についての詳しくは、『ソニー・ボーイ』のコーナー参照してください(こちら)。
ただ、編成も雰囲気も違えど、このアルバムのラストを飾るに相応しい演奏内容で、10分を超える長尺演奏ながら、飽きる瞬間の全くないクオリティの高い内容だ。
哀愁のロリンズ、ひっそりと佇む思索的なモンクのピアノ。
垣間見てしまったベテランのため息といった風情漂う、深い演奏だと思う。
とはいえ、このときのロリンズは、キャリアにおいては、まだ初期の段階。
ロリンズの生まれた年に関しては諸説はあるが、1930年生まれとすると、まだ若干24歳の時の演奏。
それでいて、この風格。この貫禄。この境地。
まるで人生の悟りを開いちゃったかのようなテナーサックスを吹いたロリンズは、傑作『サキソフォン・コロッサス』を録音する2年前。
ロリンズのキャリアの初期の代表アルバムといえば『ウィズ・MJQ』が挙げられ、本盤は陰に隠れがちだが、是非忘れて欲しくない名盤だ。
むしろアルバム的なまとまりは、こちらの方が上だと思う。
album data
MOVING OUT (Prestige)
- Sonny Rollins
1.Moving Out
2.Swingin' For Bumsy
3.Silkn' Satin
4.Solid
5.More Than You Know
Sonny Rollins (ts)
Kenny Dorham (tp)
Elmo Hope (p)
Percy Heath (b)
Art Blakey (ds)
1954/08/18
1954/10/25 #5
記:2004/07/26