サラ・ヴォーン・ウィズ・カウント・ベイシー&ヒズ・オーケストラ/サラ・ヴォーン&カウント・ベイシー
どこを切っても非の打ち所なし
「完璧すぎてゲップがでる」。
そんな憎まれ口の一つでも叩きたくなるほど、誰がなんといおうと、まさに完全無欠な名盤といえるだろう。
ノリノリなベイシー楽団の伴奏に、脂の乗り切った、伸びやかで元気なサラの熱唱。
1曲目の《パーディド》から強烈な彼らの重力に引き込まれること請け合い。
なんとまあ自信たっぷりのサラの歌唱なのだろう。
ベイシー・バンドも大迫力のダイナミクスに一歩も引けをとらない。
それどころか、完全に己の支配下においてるかのごときの貫録と迫力だ。
バンドのアレンジも演奏も、ビシッ!ときまっている。
《ミーン・トゥ・ミー》や《ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド》のようなじっくり聴かせるナンバーのサラの歌唱は良い意味で重たい。
つまり、ノリノリモード全開の曲と曲の合間の気分休めにはさせてくれずに、しんみりモードの歌唱でこそ、こちらの耳たぶをグイと引っ張り、最初から最後まで気を抜かずに聴かずにはいられない状態に陥らせる。
細やかな感情表出、ニュアンス表現は見事。
録音は1961年の1月。
この時期のサラは、本当に完成された、突っ込み所が皆無の完全無欠なシンガーだったんだなと痛感する。
個人的にはベイシー楽団お得意のブルースに歌詞をつけて歌われた《アンティル・アイ・メット・ユー》がお気に入りだ。
楽団にとっては連日演奏している手練のナンバーに、サラの歌唱が見事に溶け合い、ベイシーおはこナンバーがバージョンアップされた感がある。
これを1枚聴き通せば、ぐったりと心地よい疲れが襲いかかってくるほどの熱量、ノリ、エキサイティングさ加減。
こういう演奏はぜひ生で接してみたかった、と強く思わせる音源の1枚だ。(もっとも1961年時分は、私は生まれてなかったが……)
ジャケットのイラストとほど良い余白も良い感じ。
記:2009/01/16
album data
Sarah Vaughan With Count Basie & His Orchestra (Roulette)
- Sarah Vaughan & Count Basie
1.Perdido
2.Lover Man
3.I Cried for You
4.Alone
5.There Are Such Things
6.Mean to Me
7.Gentleman Is a Dope
8.You Go to My Head
9.Until I Met You
10.You Turned the Tables on Me
11.Little Man (You've Had A Busy Day)
Sarah Vaughan (vo)
Count Basie (cond)
Thad Jones,Joe Newman,George Cotten,Eugen E.Youn (tp)
Henry Coker,Al Grey,Benny Powell (tb)
Chas Baker Fowlkes (sax)
Marshall Royal (as)
Frank Wess (ts,fl)
Frank Foster,Billy Mitchell (ts)
Charlie Fowlkes (bs)
Kirk Stuart (p)
Freddie Green (g)
Edward F.Jones Jr.,(Eddie Jones) (b)
Sonny Payne (ds)
1961/01月