追悼:ガトー・バルビエリ
ガトー・バルビエリ 死亡
2016年4月2日、ガトー・バルビエリが亡くなった。
ガトーといえばアルゼンチン出身のテナーサックス奏者で、中南米民俗楽器などを加えた土着色強い音楽性と、理性もテクニックも強引に放り投げ、目一杯の情感を込めたブローの魅力がたまらない。
後期コルトレーンでジャズに開眼した私にとっては、レーベル買いでImpulse!のCDやレコードを集めていた時、何の前情報もなく手にした『チャプター・ワン』にまんまとヤラれ、
「これ、ジャズだよな?いや、それにしてもなんつーか激しくて切なくて・・・そうか、これがラテンというやつか!」
と、そのまんまズルズルとハマッたことを思い出す。
変わらぬ演奏スタイル
訃報に接してガトーのアルバムを棚から引っ張り出してローテーションで聴いた。
40年以上のキャリアの中で、彼が残した作品はどれも鮮烈だ。
時期によって
1.フリー・ジャズの新星としてジャズ・シーンに現れた60年代
2.自らのアルゼンチーナとしてのルーツに目覚め、土着の音楽(タンゴ、サンバ、フォルクローレなど)と民俗楽器を積極的に導入し、個性を確立し70年代
3.クロスオーバー/フュージョンなアレンジをバックにしながらも、濃くて激しいブローは全然変えることなく、個性を貫き通した70年代後半から80年代
4.すっかりオシャレでダンディなおじさまになったにも関わらず、相変わらず濃くて激しいブローで吹きまくり、バックも土臭いサウンドに回帰した90年代から現在
の4つに大きく分かれるガトーの音楽性だが、マイナー・スケールを「ギュゴゴゴゴゴ!!」と炸裂させるテナーサックスの演奏スタイルは全く変わらない。
「うた」に生きたアーティスト
かつて日本のジャズ喫茶でガトーが流行った時に「これぞ魂の叫び!」と絶賛する声と「あんなもんワンパターンだ、ジャズなんかじゃなくて演歌サックスじゃないか」という否定の声が同時に上がって激論が交わされたという話も聞いたことがあるが、あぁなるほど上手いこと言うなぁと、賛否両方の意見に大きく頷ける。
好む・好まないに関わらず、ガトーを聴いた人は誰もがその「理性もテクもかなぐり棄てた歌心」に、どこか打たれるんだろう。
追悼のシメには、1967年にリリースされたソロ・デビュー作『イン・サーチ・オブ・ザ・メモリー』を爆音で聴いた。
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ガトー・バルビエリ In Search Of The Mystery
「ピアノなし、チェロ+ベース+ドラムス」という特殊なカルテット編成は完全なフリー・フォームで相当にヘヴィなものであり、ガトー自身後年のような独自のスタイルは確立されていないとはいえ、マイナー・スケールを目一杯の情感を込めて放つテナーには、もうこの時点で彼ならではの「うた」がみなぎっている。
誰に何と言われようと、時としてアンチ・ジャズとレッテルを貼られようと、自己の美学、いや、もっと根源的な“うた”への探究に生きた真のアーティスト、ガトー・バルビエリの冥福を心から祈りたい。
記:2016/04/29
text by
●高良俊礼(奄美のCD屋サウンズパル)