シアリング・オン・ステージ/ジョージ・シアリング

   

キャラヴァン

《キャラバン》って、つくづく面白い曲だと思う。
演奏人数やフォーマットをを要求しないというか、どのような演奏形態でも、とりあえずはサマになってしまう変幻自在のナンバーといっても良い。

大人数編成の、いわゆるビッグバンド形式で演奏すえば大迫力のアンサンブルになるし、ドラマーをプレゼンテーションするショーケースにもなり、同時にダイナミックな演出をしやすい曲ともいえる。

映画『セッション』をご覧になった方は、「ああ、あのラストの曲ね」と思い出すに違いない。


セッション

その反対に少人数編成で演奏すれば、ダイナミックさは出すことは難しいかもしれないが、この曲の怪しさ、いわゆる中近東風のエキゾチックさが浮き出てきやすい。

ジョージ・シアリングが、1957年にカリフォルニアの「クレアモント・カレッジ」にてセクステット編成で演奏した《キャラヴァン》は、まさに後者。

トゥーツ・シールマンスとアルマンド・ペラザのコンガがエキゾチックなムードを振りまきながら、華麗、かつ妖艶さもふりまきながら演奏が進んでゆく。

安定感とダイナミクス

もちろん《キャラヴァン》も素晴らしいが、このアルバムの目玉の筆頭にあげられるのは、《セプテンバー・イン・ザ・レイン》だろう。

トゥーツ・シールマンスのハーモニカも素晴らしいが、この時のセクステットの素晴らしさは、アンサンブルの一体感と緩急の巧みさだと思う。

たった6人の編成でありながら、ビッグバンド的なダイナミクスと安定感をも有している。

各人の技量、見せ所もきっちりと考えらえているうえに、全員が一丸となってまとまった時のアンサンブルの一体感も素晴らしい。

聴かせること、魅せることにかけては、このジョージ・シアリングのセクステットは、音で魅せるプロのショーマンたちがバランスよく編成され、極上のサウンドを提供しているある日の時間を切り取った作品が、本作『シアリング・オン・ステージ』なのだ。

album data

SHEARING ON STAGE! (Capitol)
- George Shearing

1.September In The Rain
2.On The Street Where You Live
3.Roses Of Picardy
4.Little Niles
5.Caravan
6.I'll Remember April
7.Little White Lies
8.East Of The Sun
9.Nothing But D Best

George Shearing (p)
Emil Richards (vib)
Toots Thielemans (g,har)
Al McKibbon (b)
Percy Brice (ds)
Armando Perazo (per)

1958/03/08

 - ジャズ