ザ・ファビュラス・スライド・ハンプトン・カルテット/スライド・ハンプトン

      2021/02/02

熱い!分厚い!

熱い! なんてエモーショナルなんだろう。

いったい、この熱量はどこから来るのだろうか?
濃密な演奏から発散されてくる熱気でむせ返るほどだ。

これって本当に4人の音? トロンボーンのワンホーン・カルテットなのに、50年代後半から60年代にかけての2管編成ブルーノートあたりの分厚いサウンドに聴こえてしまうのは、一体どういうことか!?

高温多湿な音

スライド・ハンプトンの悪く言えばニュアンスのコントロールのあまりされていない一本調子なトロンボーンが、ここではプラスに作用している。

とにかく、「ぼっあぁぁ!!」と高温多湿の音なのだ。

まろやかな音色を持つさしものトロンボーンも、ここではスライド・ハンプトンの息の量に負けて悲鳴を上げているかのようだ。

リズムセクションもスゴい

トロンボーンも凄いが、リズム隊も凄い。

三者三様の真剣勝負といった感じ。

三人ともども必死にスイングをしまくって脱落者せぬよう、必死のせめぎ合いをしているかのごとく。

フィリー・ジョーのドラムがジャック・ディジョネットに聴こえたり、トニー・ウイリアムスに聴こえたりする。

ニールス・ペデルセンのベースがセシル・マクビーに聴こえたり、リチャード・デイヴィスに聴こえたりする。

ヨアヒム・キューンのピアノが、ドン・プーレンにも、狂ったキース・ジャレットにも聴こえる。

とにかく、このリズム陣の突進ぷりは尋常ならざる迫力。ほとんど戦い。
全篇このような感じの演奏が続く。

バラードも熱い

4曲目に《ラメント》という曲があるが、「あ、ラメント=哀歌ね。ここでちょっと箸休めなのかな?」などと思うなかれ。

たしかにバラード調だが、でも、なんだか熱い。

ようするに、収録曲全部が熱い。

なんだかんだいって、隅から隅までエキサイティングなこのアルバム。

ヤケドに気をつけましょう。

記:2002/01/12

album data

THE FABULOUS SLIDE HAMPTON QUARTET(AMERICANS SWINGING IN PARIS) (EMI)
- Slide Hampton

1.In Case Of Emergency
2.Last Minute Blues
3.Chop Suey
4.Lament
5.Impossible Waltz

Locksley Wellington "Slide" Hampton (tb)
Joachim Kuhn (p)
Niels-Henning φrsted Pedersen (b)
Philly Joe Jones (ds)

1969/01/06

 - ジャズ