ソロ・モンク/セロニアス・モンク

2022-02-11

ニューヨーク以外の場所

セロニアス・モンクは、ソロピアノの作品をいくつか出しているが、もっとも聴きやすく、親しみやすい内容なんじゃないかと思う。

偶然かもしれないが、『ソロ・オン・ヴォーグ』のパリといい、『アローン・イン・サンフランシスコ』のサンフランシスコといい、本作のロスといい、モンクの活動の拠点とするニューヨーク以外の地で録音されたソロピアノのほうが、肩の力の抜けた、リラックスしたピアノを弾いているように感じるのは、気のせいだろうか?

ニューヨーク録音の『セロニアス・ヒムセルフ』が、あまりにも張り詰めたテンションなので、そう感じるだけなのかもしれないが……。

ストライド奏法

とにもかくにも、『ソロ・モンク』から発散される空気は、どこまでも「陽」だ。

おそらく、冒頭の《ダイナ》が、このアルバムのトーンを決定しているのだろう。

気持ちの良いストライド奏法。
ストライド奏法とは、ま、簡単に文字で表現しちゃうと、左手による

♪ズン・チャン/ズン・チャン

な演奏だ。

どうして、「ストライド=広げる」奏法なのかというと、「ズン!」のところで左手を広げて弾くから。1オクターブ離れたルートとなる音を、広げた左手の小指と親指で“ズン”と弾くから。

余談はともかく、ストライド奏法という定型ビートでリズムが刻まれる1曲目の《ダイナ》。

定型ビート、つまり一定の速度で演奏が流れてゆくので、モンク特有の「間」や、へんなところで引っかかる要素が減り、結果、演奏に淀みが無くなり、“モンクにしては流暢な”と言われるピアノが楽しめるのだ。

くわえて、レーベルのカラーなのか、ピアノの音がプレスティッジやリバーサイド時代の音に馴染んだ耳からしてみれば、非常にブライトでクリア。
さらには、モンク特有の“不協和音”っぽい音の使用も少なくなっている。

これらの要素が重なり、冒頭の《ダイナ》は、モンクの中でも聴き易い仕上がりになっているわけだ。

聴きやすいモンク

モンクはよく分からないけど、『ソロ・モンク』だけは好きでよく聴いているという人が私の周りには何人かいる。

『ソロ・モンク』が好感を持たれる理由は、おそらく先述した淀みの無い聴きやすさと、アルバム全体から漂う「陽」の雰囲気が大きいのではないかと思う。

さらに自作曲だけではなく、スタンダードナンバーも多めに演奏されていることも好感が持たれる大きな要因なのかもしれない。

もちろん、聴き易いからといって、モンクの個性が薄まっているというわけではない。

やっぱり、モンクはモンクだ。

この人にしか出せない独特なテイストがある。流行りの言葉を安易に使わせてもらうと“オンリー・ワンなピアノ”といったところか。

《スイート・アンド・ラヴリー》の音使いなんか、やっぱり、モンクだよなぁと聴くたびに安心するのは、私だけだろうか?

ポール・デイヴィスのイラストによる、 飛行帽をかぶったモンクのユーモラスなジャケットも良い。

モンクのソロピアノを聴きたいと思っている方には、『ソロ・オン・ヴォーグ』と共にお奨めしたいアルバムだ。

記:2004/03/22

album data

SOLO MONK (CBS)
– Thelonious Monk

1.Dinah
2.I Surrender, Dear
3.Sweet And Lovely
4.North Of The Sunset
5.Ruby, My Dear
6.I’m Confessin’ (That I Love You)
7.I Hadn’t Anyone Till You
8.Everything Happens To Me
9.Monk’s Point
10.I Should Care
11.Ask Me Now
12.These Foolish Things (Remind Me Of You)
13.Introspection

Thelonious Monk (p)

1964/10/31 #2,3,4,8,10
1964/11/02 #1,6,7,9,12
1965/02/23 #11
1965/03/02 #5

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>>ソロ・オン・ヴォーグ

追記

以前、たしか2007年の5月のことだったと思うが、ジャズ喫茶「いーぐる」で、「セロニアス・モンク特集」の講演会があった。

そのときの講演者が、『ジャズ批評』の元編集長の原田和典さん。

たしか、講演の最後のほうで、『ソロ・モンク』から《ルビー・マイ・ディア》をかけられたことを覚えている。

この《ルビー・マイ・ディア》の感想を、リヴァーサイドのコンプリートコレクターであり、また、ジャズ喫茶「GRAUERS」のマスターでもあった古庄紳二郎さんが、モンクの演奏を褒め称え、最後に、「(オーケストラ的なハーモニーが)全部聞こえました」と仰っていたことが、とても印象的だった。

そう、ピアノ一台のピアノソロでありながらも、モンクが弾くピアノからは、セレクトされた音だけではなく、そこから発せられる「空気」や「間」からも、たくさんの養分や栄養素が含まれているんだ。

もちろん、難解な演奏ではなく、むしろ平易で気軽に聴ける類の演奏なのだが、音に宿る情報量、そして、聴き手の想像力が生み出す「音風景」は無限大に広がっていく。

一人静かにコーヒーを飲みながら、しかし決して暗い気分ではなく、とても明るい気分で思索に耽ることができる非常に優れたソロピアノだと思う。

記:2015/03/12

ジャズ

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