ソングズ・アンド・ダンスィズ/ニュー・アート・サキソフォン・カルテット
卓越したアンサンブル
ニュー・アート・サキソフォン・カルテットは、1991年、スイスのバーゼルで結成された、ドイツのサキソフォン4重奏グループだ。
98年にはボンで行なわれたドイツ音楽コンペティションの室内楽部門で優勝してもいたりと、実力はお墨付き。
エンヤから発売されている『ソングズ・アンド・ダンシズ』は、ヨーロッパ各地の民族音楽や民族民謡独特のクセのある旋律が全編に渡って楽しめる。
それぞれの管が音程を微妙に外してみたり、バグパイプのような音色を出してみたり、アコーディオンのような奏法にトライしてみたりと、色彩豊かなアレンジを加えることによって、4本のサックスという「限られた音色」ゆえに懸念される「単調さ」や、リスナーに襲ってくる「飽き」を見事に緩和させている。
また、4人のサックスに加え、パーカッショニストがゲストに加わることによって、アンサンブルに豊な色彩を加え、メリハリのある内容となっているし、飽きることも全くない。
それにしても、彼らのテクニックは凄いものがある。
一糸乱れぬアンサンブル。
微妙にずらしたピッチをも含めて完璧な音程。そして絶妙なタイミングの一致。
ピッタリと決まりすぎて、逆に打ち込み音楽、そう、ゲーム音楽のような小気味良さすら感じてしまうほどだ。
ソプラノのフィスターは、1967年ミュンヘン生まれ。
ジャズの演奏もしていたが、後にミュンヘン音楽院でアンドレ・レグロスに師事し、R.シュトラウス音楽院とバーゼル音楽学校に通い、ロンデックスやドゥラングル、フルモーのマスタークラスに参加していた。
95年には、ブラームスの作品を演奏してグスタフ・バンク・コンテストで優勝しているうえに、同年、ヒンデミット賞も受賞している。
アルトのストラウブはバスル音楽大学でイヴァン・ロスに師事した。
その後ロンデックスやドゥラングル、フルモー、マルカス・ワイスのマスタークラスに参加。
現在はスイスの音楽学校で指導を行ないながら、コンチェルティーノ・バスルの一員として活動している。
テナーのスタードリンはバーゼル音楽大学でイヴァン・ロスとマルクス・ワイスに師事していた。
97年にはグスタフ・バンク・コンテストで一等賞を受賞。
現在は、バスル放送交響楽団などのソリストに招かれたり、フリードリヒシャーフェンの音楽学校で教鞭を執っているそうだ。
バリトンのストレヒラーはチューリヒ音楽大学とバーゼル音楽大学でマルカス・ワイスに師事。
その後イギリスの王立ロンドン音楽大学でカイル・ホルシュにも師事。
現在はスイス各地の音楽学校で教鞭を執る一方、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団やイギリスの王立ロンドン音楽大学ウィンド・アンサンブルなどにソリストとして招かれたりもしている。
このように、そうそうたる面々によって結成されたサックスのアンサンブル集団なのだ。
最初は独特の“臭み”のある旋律に耳を奪われ、だんだん聴いているうちに音色の美しさに快感を感じ、そして最後には、各々のサックスの有機的な絡みと、見事な役割分担、そしてそれを完璧にこなす演奏技量に圧倒されることだろう。
私は、このCDを吉祥寺のディスク・ユニオンで、アウトレット商品としてたったの500円で手に入れた。
安すぎる!?
記:2002/09/23
album data
SONGS AND DANCES (Enja)
- New Art Saxophone Quartet
1.Trott
2.Lamento Di Tristano
3.Ghaetta
4.Hakim Ludin(*1955)
5.Blue Desert
6.Michael Nyman(*1944)
7.Miniatures
8.Non Legato,Marcato
9.Floating
10.Marcato
11.Traditional(Nothern Europe)
12.Nunaga Qaqqorissoq (from Greenland)
13.Koditon (from Finland)
14.Sinu Ilus Haal (from Estonia)
15.Traditional (Brestonian),arr.by Yves Ribis
16.Laula (from Estonia)
17.Traditional (Bretonian), arr.by Yves Ribis
18.Kimiad Iwerzhon
19.Kas A Barh Kreisteiz
20.Enez Eusa
21.Draeneg
Klaus Pfister (ss)
Rene Straub (as)
Phillipp A. Staudlin (ts,ss)
Erich Strehler (bs)
Guest: Florian Arbenz (per)
2001/04/28 & 29