スティット・パウエル・JJ/ソニー・スティット
テナーを吹くスティット
アルトを吹くスティットは好きではないが、テナーを吹くスティットは嫌いではない。
音域、音色の問題が大きいのだろうが、アルトにはない、のほほんとした柔らかな味が出てくるからだ。
彼が一時期テナーに持ち替えた大きな理由は、パーカーのマネと言われたくなかったため。
パーカーが亡くなるまでは、テナーで通したそうだが、ということは、パーカーの没後はアルトに戻ったというわけだ。
そんなことだったら、パーカーさんよ、スティットにアルトを諦めさせるためにも、テナーサックスが身体の一部になってくれるまで、どうして長生きしてくれなかったんだ! と悪態のひとつもつきたくなるのだが、まぁ、それはともかく、テナーのスティットは、アルトを吹いたときには見せないマイルドな味わいがあることは確か。
テナーのスティットを楽しむのなら、このアルバムが一番!
と書きかけて、再度聴きなおすと、うーむ、スティットも良いが、それ以上にパウエルのほうが、やっぱり凄い!
いや、スティットも良いのだが、パウエルが凄すぎるのだから仕方がない。
スティットがパウエルのことをレコーディング前におだてまくったために、ノリにノッてピアノを弾き散らかしている。
なにせ、強引にスティットからアドリブパートを“音で奪う”ほどの蛮行に出ているのだから。そこのところが、音楽的には滅茶苦茶スリリング。
『インナーマン』でコルトレーンのアドリブを強引に奪うドルフィーもカッコいいが、それと同じぐらいスティットの吹くスペースを奪い去るパウエルの強引さは弱肉強食なジャズの世界をまざまざと見せつける。
と、スティットのリーダーアルバムなのに、いつのまにかパウエルのことに話題が移ってしまっているのだが、そこがジャズの面白さでもある。
リーダーだけではなく、サイドマンが魅力的であればあるほど、音楽もどんどん魅力的になってゆくのだから。
魅力的なサイドマンといえば、もう一人。
トロンボーンのJ.J.ジョンソンだ。 アルバム後半での彼のプレイは、スティットの穏やかなテナーと良い相性。
パウエル参加により、ヒリヒリとした緊迫感溢れる演奏とは好対照に、中低域の管楽器2名の繰り広げるアンサンブルは、穏やか、かつ和やか。とくに、《アフタヌーン・イン・パリ》が良いですね。
タイトルの3人のプレイが、それぞれ楽しめるアルバムだ。そのまんまなタイトルだが、内容をこれほど端的に表したタイトルもない。
記:2006/01/30
album data
STITT, POWELL & J.J. (Prestige)
- Sonny Stitt
1.All God's Children Got Rhythm
2.Sonny Side
3.Bud's Blues
4.Sunset
5.Fine And Dandy (take 1)
6.Fine And Dandy (take 2)
7.Strike Up The Band
8.I Want To Be Happy
9.Taking A Chance On Love
10.Afternoon In Paris (take 1)
11.Afternoon In Paris (take 2)
12.Elora (take 1)
13.Elora (take 2)
14.Teapot (take 1)
15.Teapot (take 2)
16.Blue Mode (take 1)
17.Blue Mode (take 2)
track 1-9
Sonny Stitt (ts)
Bud Powell (p)
Curly Russell (b)
Max Roach (ds)
track 10-17
Sonny Stitt (ts)
J.J.Johnson (tb)
John Lewis (p)
Nelson Boyd (b)
Max Roach (ds)
1949/12/11 #1-4
1950/01/26 #5-9
1949/10/17 #10-17