TALKIN’ ジャズ×文学/平野啓一郎・小川隆夫

      2018/01/11

TALKIN’ジャズ×文学TALKIN’ジャズ×文学

いやはや、この本、予想以上に面白かった。

特に、平野啓一郎氏。
彼、よく勉強していると思う。
ジャズも詳しいし、それだけではなく、クラシックやロックに歴史、美術と様々な方面に造詣が深い。

もちろん、オタク的、あるいは博覧強記的な知識の深さはないが、様々な対象の本質を見抜く目と、各々に対しての独自の考察を持っている。

ダテに芥川賞受賞者ではないな、と痛感。ま、芥川賞は、直接関係はないけれども、深くて鋭い洞察力には参った!

親子ほども年の差のある二人をつなぐ共通の話題は、やっぱりマイルスってことになるんだけれども、そこから派生した様々かつとめどもない話題が、ほんと読んでいて楽しい。

どれぐらい楽しいかというと、昼に読み終わったんだけど、その日の夜にまた再読しちゃったほど面白い。

特に、リズム面での考察が非常に興味深かった。

黒人の関節の柔らかさの話や、黒人は白人ほど体全体でリズムをとらない、体全体を使わなくても、指なら指と必要とされる部位だけでグルーヴを生み出してしまう、なんて話は、たしかに、言われてみればそうだなぁと思うし、リズム音痴な(“スクエア”という記述になっていたが)イギリス人が似て非なるブルースのマネっこをやったからこそロックが世界に浸透したって話も、言われてみればそのとおりだなぁと思ったよ。

と、かなり端折って書いているので、要約だけを読むと「?」な人も多いでしょうが、気になる人は、是非読んでみてください。面白いですよ。

トニー・ウイリアムスが結成したバンドのことを“エマージェンシー!”と記述したり(本当はライフタイム)、エリック・ドルフィーの『アット・ザ・ファイヴ・スポット』をヨーロッパ録音(本当はアメリカ)といった事実誤認、もしくは、誤植もいくつかありますが、そういった瑣末なことは吹き飛ばすほどの面白さではあります。

ジャズ本を読んで知識を増やすことも面白いけれども、このような本を読んで視点や考え方、受け止め方を学ぶのも大切なことだと思うんだ、いち鑑賞者としては。

もちろん、それほどジャズに詳しくない人にもオススメ!
ジャズのみならず、ロック、クラシックなどの話題がとめどもなく溢れでてきます。

記:2005/10/15

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