イタ車のセモベンテ、タミヤの旧ヴァージョン制作記
2021/12/07
セモベンテの魅力に目覚める
べつに『ガルパン(ガールズ&パンツァー)』のアンツィオ高校のことを「面白い高校だよな」と思ったからというわけでもないんですが、『これが本当のアンツィオ戦です!』を見て以来、どうも、小型軽量で山岳地帯を軽妙に疾走していた、CV33カルロ・ベローチェやM41セモベンテが気になって気になって。
それまでの私は、イタリアの戦車といえば、日本の戦車と同様、重厚長大なドイツやロシアの戦車と比較すると、なんだか小柄で装甲も火力も貧弱で、「やる気なさげな」戦車に見えていたんですね。
ところがところが。
最近は、べつに『ガルパン』の知波単学園のことを「面白い高校だよな」と思ったからというわけではないんですが、最近は日本の戦車、特に九七式などに魅力を感じている今日この頃なんですよ。
弱そな戦車にも五分の魂とでもいうべきか。
なので、それと同じ文脈で、イタリアのセモベンテ突撃砲も魅力あふれる車両に見えてきた。
中学生の頃から、タミヤのカタログを折に触れて眺めているのですが、AFVの商品写真一覧を見ると、真っ先に「これいらん!」と視界から除外していたのがイタリアのカルロ(カーロ)アルマートとセモベンテなんですよね。
しかし、今は逆に、これらのB級チックな戦車がなぜだかいとおしい。
九七式もセモベンテも車体を覆うリベットもドライブラシを楽しめそうですしね。
年とともに好みって変わるものだとつくづく実感しております。
最近は、ラーメンよりも、そうめんのほうが好きになってきていますから、それと同じようなものでしょう。
セモベンテ=そうめん?
まあいいや。
で、今回作ろうと考えているのは、アンツィオ高校仕様のM41も良いのですが、1/72スケールなので、いささか小さい。なので、過去に「いらん!」と除外した罪滅ぼしという意味もあって、タミヤのM40のほうを作りたいと思います。
それも、リニューアル前のセモベンテのほうを。
たしか、1974年頃に発売されたキットなんですよね。
で、最近は、このキットをベースにリニューアルがほどこされたニューバージョンが発売されておりまする。
タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.294 イタリア陸軍 自走砲 M40 セモベンテ プラモデル 35294
ま、こちらのほうはいずれ作るとして。
今回は、私がタミヤカタログを見て「いらん!」と視界から常に除外していたバージョン、つまり旧キットのほうのセモベンテを作りたいと思います。
箱の中はこんな感じ。
パーツ数は少ないのですが、細かなパーツが多いので破損しないように気を付けなければ。
説明書は、日本語バージョンと英語バージョンの2種類が入っていました。
こうしてみると、「こう見えて、じつはなかなか凄い兵器」のようにも見えてきますね。
さて、さくさく作っていっちゃうつもりです。
組み立て完了!
セモベンテ突撃砲は、ランナーの枚数もパーツの数も少ないので、あっという間に組めてしまいました。
昔のキットではありますが、パーツ分割はよく考えられていて、非常に作りやすいです。
ストレスまったくなし。
しいて言えば、足回りのパーツのところが単調作業になってしまうのですが、まあこれはセモベンテに限らず、どの戦車も似たような感じですね。
クリスティー式が多いロシア(ソ連)戦車を除けば。
しかし、足周りのユニットが完成してしまえば、後は砲の部分と、車内の部品を少々、あとは細々とした車体に取り付ける細々とした備品を接着してしまえば、それで終了!って感じですね。
サスペンション周りの造型がなかなかツボです。
モール度の凹凸のメリハリがはっきりしているので、見ていて飽きません。
あとは、テレビを見ながらノンビリとパーツを切り離してはペーパーがけして、接着して……を繰り返しているうちに、あっという間に完成。
人間でか!
というより、車輌小さ!
車高低くて小ぶりで可愛い車輌ですね。
タミヤの組み立て解説書の説明にも書いてありましたが、この車高ゆえに被弾率が低かったようですね。
この弱そうな感じがなんとも魅力です。
で、車輌の中身はこんな感じ。
おそらく車輌の内部は塗らないと思うけど。
フィギュア立たせてもういっちょ。
フィギュアが大きく見えるんですよね。
それだけ、セモベンテって小さな装甲車だったんでしょうね。
弱そうではあるのですが、なかなかそそる造型であることは確か。
なので、思いっきりボロッちく、使い込まれた感じに塗装したいと思っています。
愛しいカタチを筆で愛でたい
私はべつに戦争賛美者ではないですし、それに使用される兵器に萌えまくっているというわけでもありません。
それなのになぜ、センシャやひこーきのプラモが好きなのか?!
それはもう、塗装が楽しいからに他なりません。
だったら兵器じゃなくて人(フィギュア)や建物(城など)でもいいじゃん?というツッコミもありそうですが、どうも違うんですよね。
やっぱりメカメカした要素が欲しいんですよ。
そうすると、本来の目的は人殺しであり、戦いの勝利であり、やらねばやられるという極限の状況下を想定した中で、互いの陣営が知恵の限りを尽くして編み出した、その時代の技術を極限までに高めて生み出された兵器という物体のフォルムに「美」を見出してしまうんですよね。
ジャズでいえば、テンポ速い、コードが複雑という制約の多い極限の状況の中で、きちんと「聴かせるアドリブ」、願わくば多くの聴衆を興奮の坩堝に陥れる即興演奏をするために、研ぎ澄まされたフレーズを瞬間瞬間で頭脳と肉体の限りを尽くして紡いでいくビ・バップに「美」を感じてしまうのと同じ理由なのかもしれない。
だからこそ、そんな多くの頭脳が知恵を振り絞って具現化した物体のカタチを塗装という手段で慈しむ行為に本能的な悦びを感じるのかもしれません。
そういうわけで、セモベンテ。
強いとか弱いとかはともかく。
そして、もし自分が第二次大戦中のイタリア兵だったら、出来ることなら乗りたくない小型戦闘車両ではあるのですが、この乗り物のカタチ自体はとてもユニークで、リベットが多いなど細かなところにもチャームポイントが盛りだくさん。
だからこそ塗ることを楽しませてくれる車輌なのです。
というわけで、塗装開始。
2色のサーフェイサー
前回は組み立てが終わったところまででしたね。
これにサーフェイサーを吹きます。
マホガニーのサフを最初に吹いて、乾きかけたら、サフが乗っていないプラスチックの地肌をめがけて黒サフを拭きます。
目的は、この後に塗るタミヤのアクリルミニの食いつきをよくするためなので、べつに色がゴキブリっぽくなってもぜんぜん平気。
というよりもむしろ、同じ色が均一に乗っているほうが個人的には痒い感じがします。整然かつ均一すぎると、この後、容赦なく汚そうという気持ちが萎えます。なんだか勿体無いから綺麗に作ろうというヘンな色気がもたげてくるので、むしろ汚いくらいな色味で良いと思っています。
そのほうが、今はヘンな色だけど、だんだん綺麗になっていくからね~という気分になるからです。
水溶きアクリルで下地塗り
そして、サーフェイサーが乾いたら、次はタミヤのアクリルミニで下塗りです。
薄く水で溶いたタミヤのアクリルミニ(水溶きアクリル)を筆塗りしました。
色はフラットブラウン。
AFV車輌の下塗りはハルレッドが良いと言われていますが、私の場合、さんざんその手法(金子流)はガンプラで試みているので、たまには違う色がいいよねっ!てことで、フラットブラウンにしました。
ラッカー系だと下塗りとしてポピュラーな色はマホガニーなのですが、タミヤアクリルミニにはマホガニーという名の色はありません。
そのかわり、それに変わる色調がもっとも近い色がフラットブラウンだと思うので、フラットブラウンを水で薄めてシャバシャバと筆で塗ったわけなのです。
筆ムラとか、下地が透けてみえるとか、そんなことは気にせずに、どんどん塗っていくわけです。
先に吹いたサーフェイサーの下地が見えても気にしない、気にしない。
この後、何回も塗り重ねるので。
ちょびちょびと違う色が重ね重なり、その色の複合体の最大公約数が、その戦車の基本色となってくれれば良いわけで、個人的には。
だから、スプレーやエアブラシの均一塗装表現とは間逆な考えですね。
そして、この間逆な考えを気軽かつお手軽に表現できる手段が、薄めた塗料の筆塗りなんですね。
ハルレッドにフラットレッドをプラス
フラットブラウンの筆塗りが終了し、塗料が乾いたら、今度はハルレッドにフラットレッドをプラスしたタミヤアクリルをガシガシと筆塗りしました。
通常、戦車のようなAFVの模型は、ハルレッドやオキサイドレッドで塗るのが定石とされているようですが、そして実際私もよくやる手法の一つなのですが、今回はもう少し冒険をしてみようと考え、もっと赤っぽい色を下地に塗ることにしたのです。
ハルレッドにフラットレッドをプラスすると、かなり赤茶けた色になりますね。
これはこれで面白い。
この下地の上に基本色を乗せると、一体どんな色味になるのでしょうか?
まったく予想がつかない状態で次に進みます!
水溶きアクリルでメイン塗装
下塗りが乾き、いよいよ基本塗装にはいります。
ベースとなる色はデザートイエローにしました。
ダークイエローよりも、かなりフレッシュ(肌色)に近い濃いめの色ですが、なにを間違ったのか、我が家にはタミヤアクリルミニのデザートイエローの在庫が、たしか3瓶ほどあるので、とっとと浪費してしまいたい色の一つなので、デザートイエローをメインに筆塗りしまる。
といっても、私の場合の筆塗り基本塗装は、はなからキチンと塗ろうとなんざ考えていません。
水でシャバシャバに薄めた水溶きアクリルを、太い平筆でギャバギャバと飛沫を飛び散らせながら、勢いよくドリャァ!と塗っていく手法です。
水で溶いたアクリル塗料はすぐに乾燥してくれます。
水が蒸発すれば顔料が残るので。
そうしたら、今度は、オレンジを混ぜたり、グレーを混ぜたり、ダークイエローを混ぜたり、パープルを混ぜたり、スカイを混ぜたりと、色々なアクリル塗料を、ベースカラーとなるデザートイエローに混ぜて、水で薄めながら、少しずつ太めの面相筆でペタペタと模型表面の上に塗る、というよりは置いていくのです。
この時間がいちばん楽しいですね。
どんどん色が変化していくから。
で、途中段階ですが、こんな感じになりました。
車輌上面は、スカイを混ぜたデザートイエローをペタペタと置いていったので、明るい感じになっています。
反対に、車輌中央から下にかけては、オレンジ、あるいはクリアオレンジを混ぜた色をランダムに塗っているので、なんとなく暗いというかボロい感じになっています。
ここらへんは、かなりテキトーです。
自分の中で法則性のようなものはありません。
というより、試行錯誤を繰り返しながら、法則のようなものを見出そうとしている最中かもしれません。
とにもかくにも、基本塗装は完了。
楽しい作業で、時間を経つのが忘れてしまいます。
1時間ほど集中していたつもりが、時計を見ると3時間以上熱中していたことに気付き、驚きました。
もう、この段階で完成にしても良いと思っているのですが、昔からの癖で、最後はエナメル系塗料を使わないと、なんだか気分が落ち着かない自分がいます。
ですので、しばらくこの状態で飾っておきながら、何色でスミ入れやフィルタリングをするのかを考えたいと思います。
オレンジとスカイで水遊び
タミヤ1/35スケールのセモベンテ突撃砲、あいかわらず、水溶きアクリルでびちゃびちゃと水遊び(?)を楽しんでおります。
前回は、色々な色を混ぜながらも、「なんとなく基本色っぽい」色に落ち着かせて、いったん作業を終了しました。
で、今回はというと、懲りずに、またまた水溶きアクリルでばしゃばしゃと色々な色を乗せる作業を継続しており、今回は、タミヤアクリルのクリアーオレンジを水で薄めて、様々な箇所に流し込んだり、色を乗せたりしています。
この色を薄めて、面相筆の先につけて、ちょんちょんとランダムに塗装すると、陰のようにみえたり、サビのように見えたりするんですね。
けっこう立体感というかメリハリがつくので、筆を動かすたびに車輌に変化がもたらされるので、楽しいです。
楽しいので、ついついやりすぎてしまいます。
やりすぎてしまい、全体的にオレンジっぽくなって「オレンジ色のにくい奴」にならないよう気をつけなければならないのですが、なってしまったので、次は別な色で調整をかけます。
その色は、スカイ。
なんとイギリス機の下面色を、なぜイタリア戦車の上面に?!となりますが、私自身もよく分かりません(汗)。
直感というか、余っているというか、使い道があんまりないからというか。
とりあえず、水で薄めたスカイを車体の上面を中心に、ちょんちょんと少しずつ乗せていきます。
すると、思っていたほど違和感なく、車輌上面の明るい感じが表現できたような気がするので、なるほど、ダークイエロー系にスカイという組み合わせもアリなんだなと思いました。
本当は、こういう作業、ベースカラーを塗っている段階でわざわざせずに、いったんはスミ入れなどをして、その後に油彩などで施す作業工程のほうが効率的かつ効果的だとは思うのです。
しかし、あえてベースカラー塗装の段階で、ある意味、このようなムダ(?)な作業をして遊んでいるのはなぜか?
それは、ただ単純に、水で溶いたタミヤのアクリル塗料でべちゃべちゃ遊ぶのが楽しいからなのです。
それだけヽ(' ∇' )ノ。
油彩のホワイトで最終仕上げ
この記事の続きです。
>>水溶きアクリル塗装、クリヤーオレンジが大活躍~タミヤ1/35セモベンテ突撃砲
水溶きアクリルのびちゃびちゃ水遊びが一通り終わったら、というより飽きてきたら、いよいよ最後の仕上げです。
ドライブラシ。
リベットなどのモールドを浮かび上がらせる作業、そして車輌の色彩にさらに変化をつける作業です。
クサカベ絵の具のパーマネントホワイトを面相筆につけ、それをティッシュで拭いとって、表面をランダムに擦りました。
で、完成。
上面は、ちょっとホワイトホワイトしすぎたかもしれません。
恰幅の良い戦車長フィギュアとともに。
フィギュアを載せると、車輌が小さく見えます。
実際小さかったんだろうけど。
このタミヤ1/35スケールの古いキットのほうのセモベンテ突撃砲、小さいながらも、けっこう作りごたえのあるキットでしたよ。
また機会があったら作ってみたいと思わせるだけの魅力は十分あるキットでした。
記:2019/09/10
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