テンダー・フィーリンズ/デューク・ピアソン
真夜中のブルース
アルバム最後の《3.A.M》という曲を聴いてみよう。
なんの変哲もない「正しく普通のブルース」だ。
しかし、こんな逸話を知ると、少し聞こえ方が変わってくるのでは?
セッションが終わって、みんなは荷物をまとめかけていて、スタジオの明かりも消えていた。その時、デュークがブルースを演奏し始めたんだ。帽子をかぶったままでね。そしたら、ジーンがすかさずベースをつかんだ。
レックスもドラムに向かった。調整室の私たちも録音の準備をした。大慌てでね。そうして出来上がったのが、この作品なんだ。実にリラックスした、ソウルフルな曲だろ。(アルフレッド・ライオン)
《3.A.M》とは、レコーディングが終了した(あるいは再開した)時刻を指すのだろう、きっと。
デューク・ピアソン(本名:コロンバス・カルヴィン・ピアソン)のピアノは、ファンキーだが、大袈裟にファンキー過ぎない、どこか抑制されたタッチが持ち味だと思う。
もっとも、サイドマンに回ったときや、他のリーダー作品でのピアノを聴くと、その限りではないのだが、少なくとも、この『テンダー・フィーリンズ』においてのピアソンのピアノは、とても控え目、そして細やかだ。
派手ではないが、ジワリと心に染み込んでくるような一音一音。
そんなピアノが、午前3時のニューヨークに静かに響きわたったのかな?などと想像しながら耳を傾けるのも、また楽しい。
本アルバムは、数あるブルーノートへの吹き込みの中でも、最高傑作との誉れの高いアルバムだ。
端正なピアノトリオ。
真夜中に、少しボリュームを落として、しっかりとピアノの一音一音を拾うように聴くと、深夜のセッションの情景が目に浮かんでくるのでは?
ちなみに、この曲の一曲前の《オン・グリーン・ドルフィン・ストリート》も、しみじみと、ゆったりしたテンポで演奏されている。
この曲の様々なバージョンに聞き飽きた耳にも新鮮だ。
記:2002/03/14
album data
TENDER FEELIN'S (Blue Note)
- Duke Pearson
1.Bluebird Of Happiness
2.I'm A Fool To Want You
3.I Love You
4.When Sunny Gets Blue
5.The Golden Striker
6.On Green Dolphin Street
7.3 A.M.
Duke Pearson (p)
Gene Taylor (b)
Lex Humphries(ds)
1959/12/16 & 19