鉄人28号/鑑賞記
2018/01/09
試写を観て、なかなか良かったので、今度は劇場に息子を連れて観に行った。
なにが良かったって、2度目にしてようやく気がついたが、オーケストレーションだよね。千住明の。
最近、いろいろなところで活躍している千住明の曲とアレンジは、キャッチーで平易ながらも薄っぺらにならずに、キチンと聴き手側の琴線のツボを抑えているところがミソ。
太平洋戦争中の白黒フィルムを効果的に編集したオープニング、
「ボクに鉄人を操縦させてください!」までの過程、
鉄人の発進シーン、
エンドロール…。
この《鉄と勇気》というメインテーマが効果的に使われているからこそ、映画がより一層生きてくるのだ。
行進曲調の曲に、メルヘンチックな要素が加わったアレンジが心躍る。
懐かしさを感じるのは、きっと、小学校のときにさんざん練習させられた運動会の行進曲とテンポが同一だからだろう。
でも、いいよね、なんだかワクワクするようなアレンジだからさ。レトロなテイストに、現代的なスマートさも兼ね備えた秀逸なるトラックだ。
だから、ついつい帰りにサウンドトラックを買っちゃったよ。
3,000円で28曲入り。 28曲というこだわりが良いよね(笑)。
そういえば、会場で売られていたパンフレットも良かった。
昔の「テレビマガジン」のような特撮&アニメ雑誌や、「小学1~6年生」のような学習雑誌を彷彿とさせる懐かしいページレイアウトと色調。
ページによっては、いかにも版ズレしていそうな(実際は版ズレしていないけど)赤と青の懐かしい2色刷りのページが挿入されていたり、漫画の金田正太郎君と、実写の金田正太郎君の架空対談が掲載されていたり(もっとも、この対談を読むと、漫画の正太郎君は頭悪そうに感じてしまうが)、ページ脇のスペースが読者からの投稿コーナーになっていたりと、遊び心が満点で、大人でも(だからこそ?)楽しめる。
▼「今風レトロ」なアートワークも良い映画のパンフレットとCD
あと、そういえば、個人的に「おおっ!」と思ったのは、正太郎君がお父さん(阿部 寛)の遺品を漁っているシーンで、一瞬だが、ウェス・モンゴメリーの『インクレディブル・ジャズ・ギター』のレコードが映ったこと。
ほほぉ、正太郎君のお父さんもなかなか渋い趣味をお持ちで。
しかも、『フルハウス』じゃないところがニクイねぇ、なんて思いました。このレコードが出てくるのは本当に一瞬だけだけど。
あと、もう一つ。
これは感想じゃないんだけども、私が試写で鉄人を観た後、何人かの人に感想を求められた。
「うん、なかなか良かったよ」
と答えると、
「でも、CGなんですよねぇ?」
と、まるでCGじゃダメなような言い方をする輩がいた。
「良かった」という感想に対しての「でも(=but)」なわけだから、「CGは良くない」というわけなのだろう。
内容も観ずに、CGだからという予備知識だけで映画の優劣を判断するような人間は最初から面白いかつまらないかを確認せんでよろしい。
もっとも、私から「CGだからつまらなかった」という一言を引き出して安心したかったのかもしれぬが。
もっとも、どうしてCGだといけないのだろうか?
実物大の実写じゃなきゃアカンのだろうか?
CGも特撮も、あくまで手段。
問題は、それを使う側のセンスと力量だろう。
あとは、これがもっとも重要なのだが、結局は、良い映画に仕上がっているか、ダメな映画に仕上がっているかだろう。
もちろん「鉄人」は前者のほう。
良い仕上がりになっております。
もちろん、ニューバージョンの鉄人のオモチャっぽさは賛否両論分かれるところだろうが、ブラックオックスのボディの深いツヤなどは、CGだからこそ出せる技。
ヘンにウエザリングが施された、中途半端リアルなメカよりも、この映画の場合は、テカテカに塗装された、巨大な鉄のカタマリのほうが、より一層の不気味感が出て良いと私は思ったが。
CGを使っているか否かということは、映画を評価する上での一つの基準にする人もいるだろうし、それはまったく当人の自由だが、ただ、CGを使っているという、ただそれ一点だけをもってして、映画全体をネガティブな目で観る神経は、それこそ偏見だ。
以前も書いたが、この映画の良いところは、特撮と人間ドラマという2つの柱が有機的に絡み合い、補完しあうことによって、一段と内容のグレードがアップしている点なのだ。
CG云々で最初から評価を下げてしまう人は、エレクトリック楽器を使ったジャズを否定する頑固なジャズオタクに近いメンタリティの持ち主だ。
「オレはアコースティック楽器で4ビートを演奏しているものしかジャズと認めん」といって聴く耳を持たないカビの生えた頑固ジャズマニアね。
本人は「こだわり」のつもりかもしれないが、「頑迷」と限りなく紙一重なポリシーでもある。
観た日:2005/03/20
記:2005/03/20