ゼム・ダーティ・ブルース/キャノンボール・アダレイ
人懐っこいアルトに泥臭さも加味
キャノンボールのリーダー作の中では、もっとも愛聴しているのが、このアルバムだ。
なんたって、デューク・ピアソン作曲の《ジーニー》が入っているからということが大きい。
ドナルド・バードの『ハーフ・ノート・カフェ』でのライブも名演だと思うが、適度に泥臭いこちらのバージョンも捨てがたい。
泥臭いといえば、泥臭名曲の《ワーク・ソング》も収録されていますな。
こちらの演奏も、ナット・アダレイのリーダー作のバージョンと負けず劣らずの出来。
ただ、私の大好きなスタンダード《イージー・リヴィング》が酔っ払いのべらんめぇ口調のような、のたくりまくりで吹かれているのはいただけない。ま、この口調はキャノンボールの大きな特徴の一つでもあるのだけれども、曲次第では「やめてくれ」になる。
彼の酔っ払い的なべらんめぇ節を楽しむのなら、タイトル曲の《ゼム・ダーティ・ブルース》が良い。流暢にクダを巻くフレーズがもっとも生かされた曲だ。
こってり、たっぷり。クドさの寸止め。
この按配がちょうど良い。
このトンコツ風のキャノンボール節の後に登場するナット・アダレイのコルネットが、良い箸休め(耳休め)となっているので、7分強の演奏時間もあっという間。
キャノンボールは、音色(とくに音の張り)やテクニック、フレージング、微妙なところまで神経の行き届いたビブラートなど、楽器コントロール技術においては、完璧ともいえるほどのテクニックのサックス奏者だが、「凄い!」と感じる以前に、まずは「快い!」と感じさせるサックス奏者だ。
どこまでも人なつっこいアルトが、親しみやすさを倍増させている。
特に、マイルスと演っていた頃に比べ、自己名義のバンドになってからというものの、プレイに適度な泥臭さが加味されているので、親しみやすさにも拍車がかかった。
先述のタイトル曲や、ボビー・ティモンズの名曲《ダット・デア》なども彼の泥臭くも親しみやすいスタイルを充分に活かす選曲だ。
そういえば、このアルバム、iTunesに読み込ませるとと、ジャンルには「R&B」と表示されるんだよね。
でも、この分類、分からないでもない。
「JAZZ」と表示されるよりは、リズム・アンド・ブルースに分類されたほうが、たしかにシックリとくるものがある。
製作者(あるいはCDにデータを焼き付けた人)は、なかなか良くワカッテいる。
記:2006/07/16
album data
THEM DIRTY BLUES (Capitol)
- Cannonball Adderley
1.Work Song
2.Jeanniie
3.Easy Living
4.Them Dirty Blues
5.Dat Dare
6.Del Sasser
7.Soon
8.Work Song (alternate version)
9.Dat Dare (alternate take)
Cannonball Adderley (as)
Nat Adderley (cor)
Barry Harris (p) #1-4
Bobby Timmons(p) #5-9
Sam Jones (b)
Louis Hayes (ds)
1960/02/01 #5-9
1960/03/29 #1-4