サード・ワールド/ガトー・バルビエリ
まぶされたエスニックテイスト
『アンダー・ファイヤー』とともに、個人的に愛聴しているガトー・バルビエリのアルバムの1枚だ。
ガトーのアルバムのほとんどがB級テイストが漂っているのだが、このアルバムのB級地ストは、多のアルバムとは趣が少々違う。
エスニックなテイストがより増大し、それゆえのカッコ良さがあり、そこがたまらなく魅力なのだ。
結局、引き込まれてしまう
「B級」というと、ちょっと語弊があるかもしれないけれど、昔の香港映画、そう、ジャッキー・チェンの『蛇拳』とか『ヤング・マスター』あたりのテイスト。
それから、70年代の特撮ヒーローのカッコよさのツボ、このヘンに「うん、うん、わかる、わかる、そ~なんだよな~」と、共感出来る人には、ガトーの『第三世界』や『アンダー・ファイヤー』はたまらない世界、燃える世界なんじゃないでしょうか。
とはいえ、このアルバムの舞台は香港でも日本でもなく、日本の裏側、南米はアルゼンチン。
ガトー・バルビエリは、アルゼンチン出身のテナー・サックスプレイヤーなのだ。
なんだか胡散臭さぷんぷんだけど(ゴメン!)、出てくるサウンドの“ベタさ加減”がカッコいいテナー・サックスプレイヤー、ガトー・バルビエリ。
サックスを通じて、すさまじく咆哮します。
「ぶぎゃー、どぎゃぁ~、ぶりぶり!!!」
このサウンドは、彼の崇拝している先輩プレイヤー、コルトレーンの比ではありません。
そうかと思うと、イントロでは歌うし(笑)。
♪やめりとぉ~、やいやいやいやい、やいやいやぁ~
しかも、なんだかものすごく頼りない歌声だぞ(笑)。
酔っぱらっていい気分になって民謡を口ずさむ田舎の青年団の若者のようだ。
でも、なんだか引き込まれてしまうのもまた、たしかで。
アンサンブルの引力
チャーリー・ヘイデンが確実なボトムの支柱を形作る。
これに上に乗るは、哀愁の旋律。
くわえて、分厚いアンサンブルが我々に襲いかかり(ラズウェル・ラッドのトロンボーンが、サウンド作りにすごく貢献している)、もう逃れられない。
ああ、引き込まれてゆく、ガトーの世界に。
ガトーのテナーとともに、がっしりとした骨格のアンサンブルが形成する引力もかなりのもの。
決して安っぽいというわけではないけど、なんとなく場末感も漂う、この感じ。たまりませんですね。
キライな人はキライなのかもしれないけど、私は結構好きです。毎日は聴けないけど。
記:2004/03/20
album data
THE THIRD WORLD (Flying Dutchman)
- Gato Barbieri
1. 1) A. Introduction
2. B. Cancion Del Llamero
3. C. Tango
4. 2) Zelao
5. 3) Antonio Das Mortes
6. 4) A. Bachianas
7. B. Haleo And The Wild Rose
Gato Barbieri (ts,fl,vo)
Roswell Rudd (tb)
Lonniel L. Smith,Jr. (p)
Charlie Haden (b)
Beaver Harris (ds)
Richard Landrum (per)
1969/11/24
YouTube
動画でも、このアルバムを紹介しています。
阿部薫も、このアルバムのレビューを書いていたんですね。
よろしければご覧ください。