トランペット・トッカータ/ケニー・ドーハム
いかようなスタイルにもフィットする哀愁ラッパ
ケニー・ドーハム(tp)と、ジョー・ヘンダーソン(ts)の師弟コンビが送り出す、ラテンタッチな哀愁。
もちろん、《ママシータ》のことだ。
この1曲だけでも、このアルバムを聴く価値はある。
もう1曲聴いて欲しいナンバーを挙げるならば、タイトル曲の《トランペット・トッカータ》。
この曲は、時代を超えて、クラブシーンでヒットした。クラブでのヒットといえば、『アフロ・キューバン』もそうですね。
無国籍という言葉はあるが、ドーハムのトランペットは“無時代”という言葉を思い出す。
古くは、生粋のバッパーだった彼だが、時代の流れとともに、ハードバップ、ジャズロック、新主流派とさまざまなスタイルにフィットするトランペットを吹く上に、時代を超えて若者からも指示を受けている。
決して派手なテクニックを多用するトランペッターではないが、いぶし銀とでもいうべき「味」と「ニュアンス」で、最後まで聴かせてしまうドーハムの貫禄、健在。
もちろん、『静かなるケニー』に代表される、ちょっとショボクれた感じの四畳半的トランペットではなく、このアルバムでのドーハムのトランペットは元気いっぱい。
メロディアスなことはもちろんのこと、トランペット本来のブリリアントな輝きもたっぷりと堪能させてくれる。
心地よいウネリのあるフレーズで演奏に厚みをもたらすジョーヘンのソロもハードで聞き応えアリ。
“聴こえないピアノ”、いや、“存在感を主張せずに演奏を盛り上げるピアノ”を弾くトミー・フラナガンの職人芸も、気が付けばかなりのもの。
ちなみに、原題の表記は“Trompeta”となっているが、これは誤植ではなく、“Toccata”がラテン語なため、それに合わせたラテン綴りにしたもの。
もうひとつの理由は、アフロ・ラテン・リズムを用いた曲ゆえ、スペルもラテンのほうがいいだろうという判断によるものだそうだ。
記:2010/05/27
album data
TROMPETTA TOCCATA (Blue Note)
- Kenny Dorham
1.Trompeta Toccata
2.Night Watch
3.Mamacita
4.Fox
Kenny Dorham (tp)
Joe Henderson (ts)
Tommy Flanagan (p)
Richard Davis (b)
Albert Heath (ds)
1964/09/14