月天心/一青窈

      2021/02/10

月天心

最初は、漢字、読めなかった

一青窈のデビューアルバム『月天心(つきてんしん)』が発売された当時、ヴォーカル教室通っている女の子からヒトトヨウいいよ、って薦められたんですね。

私は彼女のことあまり知らないままこのアルバムを買ってしまったんだけど、店頭で手に取ったときの感想は、なんて読むんだ、この人の名前?(笑)

全然関係ないけれども、“窈”っていう文字から受けるイメージは、なんか攻撃力高そうなヴォーカルだなぁ、激しいのかなぁ、などと思って家にCDを持って帰ったものですが、全然そんなことなくて(笑)、1曲目のしっとり《あこるでぃおん》から、ぐぐっと彼女の世界に浸ってしまいました。

彼女の良いところ、そして持ち味は、終始艶やかなこと、どこかしっとりと濡れていること。それは曲もヴォーカルも。
だから、潤いの少ない楽曲は、あんまり彼女っぽくないと思う。

たとえば、ヒット曲の《お江戸ポルカ》なんかはあんまり好きじゃないし、このアルバムでいうと《イマドコ》なんかも、違う切り口にチャレンジしているのだろうけれども、あんまりピンとこないんだよね個人的には。

しかし、それ以外の曲は潤いタップリ。
聴き応え十分。

ファーストアルバムから、すでに独自の世界を形作っております。

ただ、独自な世界観であっても、統一された世界観ではないよね。

彼女の言葉の不思議な引出しのバリエーションの豊かさが、作詞で多彩な世界を創りだすため、それに曲をつける作曲者も、その独特な世界観に合わせようと作曲するのでしょう。だから、このアルバムに収録されている曲のテイストも、ある意味、良くも悪くも取っ散らかった印象を受けてしまうのかもしれない。

でも、どうしても「違うな」と思った曲は、飛ばして聴けば良し。
いずれ好きになる可能性もあるかもしれないし、要するに自らの感覚が彼女の感性についていけないだけの話なんだから。

私の場合は、先述した《イマドコ》は今のところスキップ、ですね。

いずれにしても、耳にまとわりつくようなヴォーカルは、ありふれた言葉を、ありふれていない異世界へと誘う、そういった不思議な引力を持った、稀な天性を備えた歌ううたいであることは確かです。

好みのふり幅は大きいかもしれないけれど、近年稀にみるユニークな歌手、そしてアルバムなんじゃないかと思います。

収録曲

月天心 (コロムビアミュージックエンタテインメント)
- 一青窈

1.あこるでぃおん
2.もらい泣き
3.sunny side up
4.イマドコ
5.犬
6.月天心
7.ジャングルジム
8.心変わり
9.アリガ十々
10.望春風

一青窈 (vo)
鳥山雄司(g)
森安信夫(g,key)
武部聡志(key)
山中雅文(syn programing)
白井良明(g)
根岸孝旨(b)
美久月千晴(b)
湊雅史(ds)
金原ストリングス・グループ(strings)

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