『終着駅─トワイライトエクスプレスの恋』と『ぬり絵の旅』

   

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ぬり絵の旅

阿刀田高の『ぬり絵の旅』と言う作品がとても好きで、たしかこれを読んだのが中学3年生の時だったと思うけれども、大人の男女が繰り広げる、そこはかとなく後ろめたいムードの虜になってしまった。

「旅」というものが2人の男女が醸し出す独特の距離感とムードを高めているのだ。

とても切ない話なんだけれども、その当時、まだ子供だった私が感じ取った大人ならではの秘められた情愛と切なさは、今読み返してみても全く変わることがない。それだけ、阿刀田高の読みやすいが奥の深い文章力が秀逸だったからなのだろう。

おかげで、まだ恋すらしたことがない中学生が、その恋ってやつを数段以上飛び越えて、倦怠感漂う大人の秘め事に憧れてしまうようになったのだ。

訳あり不倫男女の旅物語

この作品、映像化されないだろうかとずっと待ち焦がれていたのだが、やはり、物語が地味だったからなのか、今のところ映像化はされされていない(私の知る限りでは)。

しかし、この塗り絵の旅のムードを色濃くたたえた作品映像作品がある。
中山美穂と佐藤浩市が主演の『終着駅─トワイライトエクスプレスの恋』である。

これは、一言でいえば訳あり不倫男女の旅物語。

相手と一緒にいられる気持ちの昂ぶりと、常につきまとう後ろめたい気分が、とてもうまい具合にブレンドされ、なおかつ、「トワイライトエクスプレス」と言う移動高級ホテルが、そのお膳立てがムードを否が応にも高めてくれている。

ストーリーは説明するだけ野暮だし、別段大きなイベントがあると言うわけでもないので、各人が実際に観たうえで感じ取ってほしいのだが、要するに、背景にどのような事情があろうとも、離れられない男女の話だ。

白い雪

大人になればなるほど、拭い切れない生活の垢のようなものが溜まってくる。
劇中で中山美穂が呟くように歌う、山口百恵の《白い約束》の一節にある「綺麗なまま生きる」というわけにはいかないのだ。

白い雪に戻れず、人生の中でさまざまな色がついてしまった男女。
ついてしまった色は二度と落とせないし二度と白い雪には戻ることができない。

これを認識し、半ば諦め受け入れ、淡々と生活を繰り返すことが賢い大人の処方箋なのだろうが、やはり、そうもいかない男女だっているわけで。
そのような男女の心情描写を、非常に上手く演出している作品だと思った。

だから、過去形で思い出話中心で語られる会話の内容や、ストーリーばかりを追い求めでも面白くはないだろう。

理性や現在自分が置かれている家庭的な状況が頭の中によぎりつつも、それでもなお、求め合ってしまう男女のどうしようもなさを味わうべき作品なんだろうと思う。

帰りたい・帰れない

早く家に帰らないとまずい、早く帰らなきゃと思いつつも、帰りたくないと言うアンビバレントな感情を一度でも抱いたことがある人ならば、うん、うん、わかる、わかる!と頷ける世界だ。
しかしそういったことが一切なく、健全な家庭生活を営んでいる人にとってみれば、もしかしたらよくわからない世界なのかもしれない。

そういう人は、そんなもんなんだと思ってみればよろし。きっと、万人受けを狙った作品ではないはずなのだから。

寝台列車に日本海。
本当にベタなお膳立てかもしれないが、やっぱり「ワケあり男女」には、冬の日本海がよく似合う。

記:2016/09/24

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