アップ・アンド・ダウン/ホレス・パーラン

   

黒い!黒い!

ホレス・パーランを代表する一枚にブルーノートから出ている『アス・スリー』がある。

真っ黒けっけのピアノに、ドライヴ&ウネリまくるノリ、ノリ、ノリの洪水のタイトル曲に多くの人が魅せられている。

そして、このトリオの上に、真っ黒けっけな二人が加わるのだから、鬼に金棒と刀と持たせたようなもの。

一人はギターのグラント・グリーン。

濃くて、グルーヴしまくるギターを弾かせたら、右に出るもの無し。

さらに、独特なフレージングで、身体が裏返ってしまいそうな悶絶テナーを吹くブッカー・アーヴィン。

分かる人は、もう名前を見ただけで、身悶えすることでしょう。

言うなれば、焼きそばパン、豚玉のお好み焼き、カレーもんじゃ、油多めの豚骨ラーメン、レバニラ炒めをフルコースで味わうようなものなのだから。

もうB級グルメがヨダレをたらすような、布陣だ。

食べる前から、食べたときの味が想像できちゃって、お腹がグーグーなることってあるけど、これがまさにそれ。

聴く前から、耳がグーグーなってしまう。

いや、耳はグーグー鳴るわけないんだけど、それほどまでに、濃くて、おいしくて、満腹感たっぷりの演奏なのです。

『アス・スリー』のトリオのメンバーは、ホレス・パーランと、ベースのジョージ・タッカーとドラムのアル・ヘアウッドだが、じつは、レコーディング直後にブッカー・アーヴィンを加えた「プレイ・ハウス・フォー」という4人編成のコンボを結成した。

しかし、このグループは活動間もなく解散してしまった。

それじゃあ勿体無いっということで、アーヴィンを加え、さらにグラント・グリーンを加えたレコーディングをブルーノートが企画し、『アップ・アンド・ダウン』が生まれた。

武骨で黒いウネリを提供するタッカーのベース。

スナップの効いたスピード感で、タッカーのベースに立体的な陰影を加えるアル・ヘアウッドのドラム。

語尾を下へ下へとベンドさせる独特のアクセントがたまらないアーヴィンのテナー。

執拗に短いフレーズをリフレインさせながら盛り上げてゆくグリーンのコテコテなギター。

腰の据わった真っ黒なピアノで演奏の核を形成するパーラン。

いやはや、凄いメンバーでレコーディングしたものです。

記:2010/05/16

album data

Up And Down (Blue Note)
- Horace Parlan

1.The Book's Beat
2.Up and Down
3.Fugee
4.The Other Part of Town
5.Lonely One
6.Light Blue

Horace Parlan (p)
Booker Ervin (ts)
Grant Green (g)
George Tucker (b)
Al Harewood (ds)

1961/06/18

 - ジャズ