ウップサラ・コンサート vol.1/エリック・ドルフィー
肉感的な《ローラ》
ドルフィーの「肉声」を存分に堪能したいときの一枚。
7分近くにわたってサックス一本で演奏される、ドルフィーの「肉声」を存分に堪能することが出来る。
ソロで演奏されている曲は《ローラ》。
チャーリー・パーカーの『ウィズ・ストリングス』の演奏で有名なバラードだ。
この曲、元はといえば『ローラ殺人事件』という映画の音楽だとか。
しかし、物騒なタイトルとはほど遠い、幻想的で美しいメロディの曲だ。
この曲をドルフィーがソロで艶めかしく、限りなく肉声に近い「声」で「歌って」いる。
他のドルフィーのソロで有名なものといえば、バスクラリネットによる《ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド》があって、いくつかのライブアルバムで聴くことが出来る。
こちらのほうは、かなりアブストラクトな演奏となっている。
個人的には、《ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド》のバスクラリネットの演奏も好きだが、どちらかというと、より原曲の面影を見いだすことの出来る、本作収録の《ローラ》のほうに惹かれる。
一音一音、しっかりとしたタンギングで繰り出されるドルフィーのアルトは、限りなく「肉声」に近いのだが、彼のソロ演奏を聴くと、音色のみならず、音と音の流れ、フレーズとフレーズの繋がり方の滑らかさと、エモーショナルさは、非常に人間的で、聴く側の耳を捉えて離さない。
ちなみに、リズム・セクション入りの《ローラ》は、数日後にデンマークのコペンハーゲンで録音された『ドルフィー・イン・ヨーロッパ・vol.2』でも聴くことが出来る。
ドルフィー以外のメンバーは、現地のミュージシャンなため、力量の差はいかんともしがたく、演奏としての一体感にはちょっと乏しいような気がする。
そういったことからも、最初から最後まで、サックス一本で歌いとおす本アルバムに収録されている《ローラ》の方が良い。
この『ウプサラ・コンサート』は、スウェーデンのウプサラのクラブで録音されたライブ音源で、1991年にフランスで発売された貴重な発掘音源だ。
1961年秋のスカンジナビア半島ツアーの一部で、リズム・セクションは全員地元のミュージシャン。
音質に関しては、お世辞にも良いとはいえないが、ドルフィーの「声」は、しっかりとこちらに届き、聴き手の気持ちを痛いほどに叩いてくれる。
フルートで演奏される「バグズ・グルーブ」などの珍しいテイクも収録されているので、ドルフィー・ファンなら、一度は耳に通しておくべきアルバムだろう。
記:2002/03/27
album data
THE UPPSALA CONCERT vol.1 (Serene)
- Eric Dolphy
1.What Is This Thing Called Love
2.245
3.Laura
4.52nd ST Theme
5.Bag's Groove
Eric Dolphy(as,bcl,fl)
Roy Johansson(p)
Kurt Lindgren(b)
Rune Carlsson(ds)
1961/09/04