ウォーム・ウッズ/フィル・ウッズ

   

ウォーム&リラックゼーション

名は体を現すというが、まさにその通り。

『ウォーム・ウッズ』。

良いタイトルだと思う。

タイトルが内容をあらわしている。

このアルバムに一貫しているトーンは「暖かさ」。

個人的には、『リラックシング・ウッズ』というタイトルでも良いんじゃないかと思う。

でも、ちょっと語呂が悪いか。

リラックスした心地の良い演奏と、暖炉の前に犬といっしょに横になっているウッズの姿が、そのまま名は体を現すと思うからだ(もっともウッズはリラックスした表情ではなく、なんだかカメラにガンを飛ばしているようだが)。

もちろん、すべての曲がリラックスした内容ではない。

ウッズらしく、熱くヒートアップするチューンだってある。

しかし、全体的な雰囲気は、あくまで肩の力を抜いてリラックスしているウッズ。

リラックスしたウッズからあふれ出る歌心も見逃せない。

卓越したテクニックの持ち主ゆえ、楽器のコントロールも完璧。淀みなく、あくまで滑らかに、魅惑的なフレーズが次から次へと出てくるのだ。

ジーン・クイルと共演作と同じ日に録音された

このアルバムのもう一つの良さは、選曲だ。

《イン・ユア・オウン・スイート・ウェイ》に始まり、《イージー・リビング》、《アイ・ラブ・ユー》と繋がる。

個人的に好きな曲のオンパレードだということもあり、非常に好ましい曲順だが、力一杯力んで吹くようなタイプの曲でもないところからも、エモーショナル過ぎない、ウッズの好演を楽しめる。

全曲ではないが、このアルバムの中の演奏は、『フィル・トークス・ウィズ・クイル』と同日に録音されたものだ。

このアルバムでウッズと共演(競演)しているジーン・クイルは、彼と同じくアルト奏者。

そして、彼に負けず劣らずエモーショナルなプレイを繰り広げるアルト奏者でもある。

『フィル・トークス・ウィズ・クイル』は、この二人が、がっぷり4つに組んだ熱いアルト・バトルのアルバムだ。

もちろんバトルだけではなく、きちんとアレンジも施されており、ただ単に騒がしい内容ではないが。

こちらのウッズの熱いプレイも素晴らしいが、ジーン・クイルが抜けた『ウォーム・ウッズ』においては、張り合う相手がいなくなった分、リラックスしながら、あくまでマイペースでアルトを吹いている。

彼ぐらい実力のあるサックス奏者だと、実力のすべてを出し切る演奏よりも、リラックスした気分で、7~9割くらいの力加減で演奏してくれたほうが、聴き手としては疲れないし、お腹いっぱいにならないで済むのかもしれない。

記:2003/08/20

album data

WARM WOODS (Epic)
- Phil Woods

1.In Your Own Sweet Way
2.Easy Living
3.I Love You
4.Squire's Parlor
5.Wait Till You See Her
6.Waltz For A Lovely Wife
7.Lile Someone In Love
8.Gunga Din

Phil Woods (as)
Bob Corwin (p)
Sonny Dallas (b)
Nick Stabulas (ds)

1957/11/08

 - ジャズ