ウェイヴ/アントニオ・カルロス・ジョビン

      2021/02/16

色違い 2つのジャケット

CDで買うなら、日本盤よりも輸入盤のほうを推薦したい。

中身の音は同じだが、大きく違うのがジャケ写の色彩だ。

ピート・ターナーの写真に着色された色合いが、日本盤と輸入盤ではジャケットの色が何故か違うのだ。

日本盤はオレンジが基調の色彩。

夕焼けのような空にキリンさん。

悪くない。

しかし、輸入盤の緑の空はどうだ。

写真は同じだ。

しかし、色味が違うだけで、こうも違うとは。

あくまで私の好みだし、日本盤のオレンジ色のほうが良いという人も多いのかもしれないが、私の場合は、このアルバムのジャケットは断然緑が似合うと私は感じる。

中味のサウンドと色合いが一致しているのだ。

もちろん、国内盤のオレンジの空も取り合わせとしては悪くない。

写真そのものが素晴らしいからね。

でも、オレンジバージョンの絵柄は、いかにも普通。

やっぱりグリーンなのだ。
やっぱり緑なのだ。

正確に言うと、ブルーの大地にグリーンの空なのだ。
それこそが、このアルバムの気分、雰囲気。
清涼感溢れるサウンドを象徴しているかのようなカラーなのだ。

心地よい秀逸なアレンジワーク

《イパネマの娘》など、ボサノヴァの代表曲をいくつも作曲したピアニスト、アントニオ・カルロス・ジョビンは、ボサノヴァを代表する一人。

彼が紡ぎだす美しい旋律、控え目で要点を抑えたピアノが、とても良い形で生かされ、料理されたアルバムが『ウェイヴ』だ。

イージー・リスニングの大御所、クリード・テイラーのプロデュース。
クラウス・オガーマンの指揮による柔らかなストリングスアレンジ。

ストリングスは、ヴァイオリンが10人以上のゴージャスな編成ではあるが、サウンドは重たくない。軽やかなアレンジが施されている。

くわえて録音は、あの有名な録音技師、ルディ・ヴァン・ゲルダー。

ブルーノートの特濃サウンドのイメージの強い彼ではあるが、あれはあくまでも、ブルーノート側の要請に応えた録音であって、レーベル違えば、このようなクリアで柔らかいサウンドを封じ込めることが出来るのだ。

柔らかな旋律を、柔らかい音色が優しく包む。
美しい旋律を、美しいアンサンブルが彩る。

心地よく空調が行き届いたホテルのラウンジで涼むような、少し優雅で贅沢な気分。 心地よさの中にも一抹のほろ苦さ。

どこまでも心地よく、まるでそよ風のようなアルバムが『ウェイヴ』。

緑の美しいジャケットを眺めて聴けば、さらに清涼感倍増。

アントニオ・カルロス・ジョビンの代表作であるばかりではなく、インストゥルメンタルのボサノヴァを代表する一枚と言っても過言ではないだろう。

これを聴いてボサノヴァ・ファンになった人も多いという。

特にボサに興味がない人でも、一家に一枚、心地よいBGMとして置いておくだけでも、生活に潤いがもたらされるのではないだろうか。

記:2009/07/20

album data

WAVE (A&M)
- Antonio Carlos Jobim

1.Wave
2.The Red Blouse
3.Look To The Sky
4.Batidinha
5.Triste
6.Mojave
7.Dialogo
8.Lamento
9.Antigua
10.Captain Bacardi

Antonio Carlos Jobim (p,g,harpsichord)
Joseph Singer (frh)
Urbie Green,Jimmy Cleveland (tb)
Ray Beckenstein,Romeo Penque,Jerome Richardson (fl,piccolo)
Ron Carter (b)
Domum Romao,Bobby Rosengarden,Claudio Slon (ds)
Claus Ogerman (cond)
Bernard Eichen,Lewis Eley,Paul Gershman,Emanuel Green,Louis Haber,Julius Held,Leo Kruczek,Harry Lookofsky,Joseph Malignaggi,Gene Orloff,Raoul Poliakin,Irving Spice,Louis Stone (vln)
Abe Kessler,Charles McCracken,George Ricci,Harvey Shapiro (cello)

1967/03/22-24 , 07/15

 - ジャズ