黒くて重いアコースティック・ファンク!ランディ・ウェストン奏でるモンク
2021/02/11
ドスンと重み
ジャムセッションなどで、たまにセロニアス・モンクのナンバーを演奏することになると、一瞬身が引き締まる。
セロニアス・モンク曲には、演奏していて「ハッ」とする箇所が多く、惰性でアドリブを取ることを拒否するような構造のものが多いからだ。
常にチャレンジの精神で臨まないと、曲に自分を持っていかれるというわけ。
そのチャレンジの方向の1つに、リズムの冒険がある。
普通の4ビートではなく、たとえばウラを強調した8ビート。
曲によっては、ダサダサな結果に終わってしまうものも少なくはないが、彼の代表作にして最多演奏曲といわれる《ウェル・ユー・ニードント》などは、裏を強調したファンク風8ビートがキマる代表的ナンバーだ。
♪シャン・シャン・シャン・シャンとイーヴンに刻まれるシンバルの連打も似合うこの曲だが、リズムをギュッとタイトに絞り、重心を低くしたビートにも、しっくりとマッチする。
ユーモラスだが、トリッキーなメロディとコード進行なので、ベースとドラムはちょこまか動かず、どっしりとデン!と構えていたほうが、かえって曲が活きてくるようにすら感じる。
このことを音で証明したのが、ランディ・ウェストンの《ウェル・ユー・ニードント》だ。
1989年にフランスで吹き込まれた、『ポートレイト・オブ・セロニアス』は、ピアノトリオにパーカッションが加わった編成による重厚な演奏。
黒々とした思いタッチのウエストン奏でるピアノ。
たっぷりと余白を生かして弾くピアノの隙間からこぼれ出るパーカッションの連打が心地よく、ドラムのビートはずっしり重い。
もちろん、すべての参加楽器はアコースティック。
うねるウッドベースが、なんともいえない黒いノリをビートに付与し、演奏に大きなノリを与えている。
下手なファンクよりも、ずっと下半身にグン!とくる、黒々としたランディ・ウエストンと、リズム陣の奮闘。
ドスンと重み。
ズシンと凄み。
重たいファンクが好きなジャズ以外のリスナーにも自信をもってオススメできる重量級アコースティック・ミュージックだ。
記:2009/12/29