ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング/ビル・エヴァンス

   


You Must Believe In Spring

ゴメスが苦手

ビル・エヴァンスのトリオには、ベーシストのエディ・ゴメスが長らく在籍していた。

だから、ゴメス参加のアルバムが多く残されているのは言うまでもない。

もちろん、ゴメス参加のすべてのアルバムに耳を通したわけではないのだが、それでも、ゴメスとエヴァンスの絡みを聞くと、「またか」と思ってしまうことも偽らざる本音。

とくに、私はゴメスのベースって、あんまり好きじゃないんだよね。

カッツンカッツンと、トレブリーな音で、たくさんの音を弾き過ぎるから。

彼のベースを人にたとえると、甲高い声でペラペラ喋る男って感じかな。

だから言っていることは凄いんだけれども(テクニックは凄いんだけれども)、どうも言われたことの3割ぐらいしか理解できないというか、そもそも最初からあんまり真剣に聴く気がおきないというか……。

それでも、このアルバムは、ゴメスとの最後の共演アルバムということもあり、聴くときの気持ちも少しだけ身がはいる。

エヴァンスの「音楽的」最高傑作

エヴァンスとゴメスは、長年共演しているだけあって、抜群のコンビネーションを見せる。

音数少なく、聴きようによっては、かなり物悲しいフレーズにも、ゴメスはピッタリと寄り添い、あるいは意図的に離れ、緩急自在なベースワークをみせる。

しかも、いつもより音数少なめなところもグッド。

自殺した最初の奥さん(内縁の妻とされている)エレインに捧げたナンバー《Bマイナー・ワルツ》や、自殺した兄のハリーに捧げた《ウィ・ウィル・ミート・アゲイン》が収録されていることからも、聴き手がの想像力がいやでも刺激され、その悲しい音からは、どうしても必要以上な物語を描いてしまいがちだが、もちろんこのような予備知識がなくとも、演奏そのものは出色の出来だということは言うまでもない。

後期エヴァンスの傑作との呼び声も高い1枚だ。

ビル・エヴァンスが達した境地ともいえる。

演奏的にではなく、音楽的な意味において、エヴァンスのある意味最高傑作なのだろう。

マイルスの『カインド・オブ・ブルー』では、弾かせてもらえなかったブルース・ナンバー《フレディ・フリーローダー》も収録されている。密やかなるリベンジ?

記:2009/11/25

album data

YOU MUST BELIEVE IN SPRING (Warner)
- Bill Evans

1.B Minor Waltz (For Ellaine)
2.You Must Believe In Spring
3.Gary's Theme
4.We Will Meet Again (For Harry)
5.The Peacocks
6.Sometime Ago
7.Theme From M*A*S*H (aka Suicide Is Painless)
8.Without A Song
9.Freddie Freeloader
10.All Of You

Bill Evans (p)
Eddie Gomez (b)
Eliot Zigmund (ds)

1977/08/23-25

 - ジャズ