なぜYouTubeで音楽のことを話しているのかというと
2019/04/15
活字を読むのが面倒なこともある
音楽が好きです。
活字も好きです。
だから、自分が好きな音楽について書いてある本やライナーノーツを読むことも好きです。
読むだけではなく、音楽から得た感動を文字にするのも好きです。
これまで、いろいろな音楽を聴いてきましたが、聴いた量でいえば、おそらくジャズが一番たくさん聴いてきたんじゃないかと思います。
だから、ジャズについて書かれた本や、レコードやCDのライナーノーツを読むことが好きです。
しかし、ある時、気が付きました。
ちょうどその日の私は、少し疲れていたんだと思います。
あるジャズ評論家が書かれた本だったのですが、ページをめくると、「うわっ、文字ばっかり!」と、一瞬引いてしまったんですね。
いや、本なので、活字だらけなのは当たり前なのですが、一瞬、文字ばかりで読むのが面倒くせぇ!と思ったんですね。
私は子どもの頃から本が好きで、活字にはまったく抵抗がないつもりでした。
それが高じて出版社に就職し、雑誌の編集部で働いていたこともあります。
また、本も書いたことだってあります。
そんな私ですら、気分や体調次第では、大好きなジャズについて書かれている本の活字を追いかけることが「面倒くさい」と感じたり「なんだか疲れそう」と思うこともあるんですよ。
でも、気を取り直して読んでみました。
難しいことなどまったく書いてありません。
いかに、題材となっているアルバムが素晴らしいのか、ミュージシャンが素晴らしいのか、そういうことが書かれているだけの文章が中心です。
普段、音楽が好きな人同士が普通に会話をしているような内容が、きちんとまとまって記されているだけです。
いざ読みはじめてみれば、それほどエネルギーは必要としません。
しかし、読み始めるまでに、一瞬「面倒くさっ!」と思った自分の感覚は忘れることはありませんでした。
活字が好きで、音楽本を読むことが好きな私でさえも、時と場合によっては、気持ちの中にある重い腰を「よっこらしょ」と上げる必要があったということは、「もしかしたら、他の人も、同じ思いをしているのではないだろうか?」と思うようになりました。
「読む」は面倒でも、「聞く」はラク
音楽が好きな人は、好きな音楽について「もっと知りたい」という思いを抱いていると思います。
「なぜ自分はその音楽のことを好きなのだろうか?」あるいは「この感動はいったい、どこから来るのだろうか?」と。
そのような疑問を抱き、その理由を知りたいという好奇心も持っていると思います。
ただ、本やネット上の活字を追いかけることに対して「少々面倒かな?と」思っている方も大勢いらっしゃるんじゃないかと思うのです。
それに本の場合は、買うのにお金がかかりますし、読むのに時間がかかります。
自分が好きなミュージシャンについて、もっと知りたいけど、お金を出して本を買って、時間をかけて読むほどでもないかな……。そう考えている人だっているはずです。
また、スマホでミュージシャンの名前を検索して出てきたページが、活字だらけだったら、「うわっ、読むの面倒!」と感じ、ページを閉じてしまう人もいるはずです。
私ですら、時としてそういう思いになることもあるので、きっと、想像以上にそのようなタイプの人って多いのではないかと思います。
ただ、繰り返しますけど、レコードやCDのライナーノーツや、音楽評論の書籍の多くは、活字の分量は多く感じるかもしれませんが、それほど難しいことが書かれているというわけではありません。
むしろ、平易な内容のほうが多いはずです。
特に、ジャズの場合は、誰々というミュージシャンは、アメリカの何々州のどこどこで生まれて、何歳の頃からピアノを始めて、ハイスクール時代にトランペットに転向して、何歳のときにニューヨークで誰々のバンドに雇われて腕を磨き……といった略歴で始まることが多いことは確かです。
こういうことって、「読むより聴いたほうが早くいんじゃないか?」と思ったんですね。
人のキャリアが書かれた活字を追いかけるのって、ちょっと疲れるんですよね。きっと理解しながら読もうとするからでしょう。
また、ジャズのライナーノーツの多くは、曲の解説の場合、「この曲は誰々が作曲したスタンダードナンバーで、初演は何年の何月何日に何とかというミュージカルで使用されたが、後に誰々の名演によって世に知れ渡ったナンバーである。このアルバムでは、テーマはトランペットとテナーサックスが奏で、テーマ終了後は、トランペット→テナーサックス→ピアノ→ベースという流れでアドリブが繰り広げられ、テーマの前はドラムとそれぞれの楽器奏者の4小節交換が2コーラス繰り返された後にテーマに戻る」という書き方のものが多く、「そんなの聴けば分かるじゃん!」という解説に文字数が費やされていることが多いです。
もちろん、このようなソロオーダーの流れを記載することが無駄だとは言いません。
でも、こういう内容って、書いてある内容は難しくはないのですが、目で文字を追いかけて読むのって、意外とエネルギーを使うんですよね。
だったら、目を使って読む労力を費やすよりも、耳で解説を聞いたほうが早いじゃん!とも思うんですよね。
また、ジャズマンの演奏の解説に関しても、「誰々らしい熱演が繰り広げられている。これは誰々のベストといっても過言ではないだろう」みたいな解説が多く、もちろん言いたいことは分かるけど、あまり書き手が感じた興奮が伝わってこないことも多いんですよね。
もちろん、音楽を言葉で解説するには限界がありますし、言葉で伝えられる内容であれば、わざわざ楽器で音楽する必要もないわけですから、演奏の内容を言語化することの難しさはあります。
でも、「エキサイティングな演奏を繰り広げている」とか「これは誰々の一世一代の名演である」とか「理知的かつ破綻のないプレイに終始している」などという言葉が続いたところで、それを読んでいる人のいったい誰が、その音楽を聴いてみたくなるというのでしょう?
これが文字の限界なのかもしれません。
だったら、ヘンに文字で修辞の限りを尽くさないでも、たった一言「すんばらしいですねぇ!」と情感を込めて語ったほうが、その語り手のエモーションは受け手にはダイレクトに伝わるのではないかと思うのです。
そのようなことからも、ひょっとして音楽の解説って、「文字」よりも「語り」のほうがいいんじゃないか?と考えるようになったんですね。
私が最近YouTubeというメディアを使って、音楽の解説をアップしている理由はそこにあります。
基本、自分のサイトで書いたことと、ほぼ同じ内容を語っているだけではありますが、伝わる速度や、こちらの考えていることが伝達される情報量って、じつは文字よりも音声のほうが上なんじゃないかと思いはじめています。
正直、たいしたことを話しているわけではありません。
だとしたら、その「たいしたことのない話」を、わざわざ活字で読むことにエネルギーを費やしていただくよりも、気軽に、ラジオ感覚で聞いていただいたほうが、受け手の労力も軽減できるはずです。
そしてなによりYouTubeという枠組みの中で音声をアップしているので、ブログに文字をアップするよりも、より多くの人に届くのではないかと考えています。
だから、最近の私は、ブログに音楽についての活字をアップするエネルギーをYouTubeのほうに向けているのですね。
まだ開始してから間もないので、今後どういう状況になっていくのかはまだ分かりません。
しかし、多くの音楽好き、特にジャズ好きの方が、気軽にラーメン屋さんでラジオを聞き流す感覚で接していただき、時には興味のある音楽に出会うきっかけになれば、それこそが最高なんじゃないかと思っています。
というわけで、今後もYouTubeに動画、……というよりも音声をアップし続けていくつもりなので、よろしくお願いいたします。
記:2019/04/14
YouTubeでも語っています
上記テキストと、ほぼ同内容をYouTubeでも語っています。
文字と音声。
同じ内容でも、どちらが伝わるでしょうか?
記:2019/04/15