ユール・ストラッティン/ブルーノートのクリスマス
クリスマスシーズンに重宝!
毎年、クリスマスシーズンになると、自宅でBGMがてらよくかけるCDが『ユール・ストラッティン~ブルーノートのクリスマス』だ。
このタイトル、察しの良い方は、ブルーノートから出ているソニー・クラークの『クール・ストラッティン』に引っかけていることにはお気づきのことだろう。
ジャケットは、ミニスカ・サンタの格好をした白人女性が、『クール・ストラッティン』のジャケットよろしく踵が高めのハイヒールを履き、サックスやトランペットを詰めたプレゼント袋を背負って歩く姿。
私は、クリスマスシーズンが到来したからといって、「どうする、こうする、あれしなきゃ、これしなきゃ」な人ではないんだけど、家にお客さんがやって来たときには、さり気なく季節感を出したくなることもあるじゃないですか? そんなときに重宝しているのが『ユール・ストラッティン』なのだ。
BGMにはもったいないクオリティ
発売と同時に買ったCDだが、内容は中々良いので、かれこれ20年近く、12月になるとかけていることになる。
内容は、新生ブルーノートが、クリスマスにちなんだ曲を、契約アーティストに新たに録音してもらった演奏10曲と、チェット・ベイカーや、カウント・ベイシーらの既録音の4曲を追加して編集されたオムニバス盤となっている。
当然、クリスマスにちなんだ曲ばかりとはいえ、選曲のバランスも、演奏内容も言うこと無し。
単にクリスマス・パーティのBGMとしてだけ使うのは勿体ないぐらいのクオリティの高いアルバムだと思う。
特に、セロニアス・モンク好きとしては、彼作曲の《もっとメリー・クリスマス》をバージョン違いで2曲聴けるところがポイントの高いところで、ベニー・グリーンのピアノソロと、ダイアン・リーヴスのヴォーカルバージョンの両バージョンが楽しめる。
いずれの演奏も、モンクの面影が色濃く宿り、しんみり&じわりと聴けるナンバーで、これらナンバーはクリスマスシーズン以外にも鑑賞に値すると思う。
曲目と解説
以下、曲目と演奏ミュージシャン、そして、簡単な解説を書いていこう。
《ヴァウシング・チャイムズ》/ボビー・ワトソン&ホライズン
誰もが知る「♪ジングルベル・鈴がなる」。アルバムのオープニングに相応しい演奏だ。後半にオブリガート的に挟まれる「♪アイ・ウィッシュ・ユア・メリー・クリスマス」のメロディも楽しい。
《きよしこの夜》/スタンリー・ジョーダン
スタンリー・ジョーダンは、タッピングを駆使して、1台のギターをまるで2台のギターが演奏しているかのような超絶技巧が話題になり、一世を風靡したギタリスト。だが、ここでの演奏は、彼のハイテクニックは影をひそめ、じっくりと聴かせる演奏となっている。
《ザ・クリスマス・ソング》/ルー・ロウルズ
メル・トーメが作詞し、ロバート・ウェルスが作曲。ナット・キング・コールが歌いヒットしたナンバー。ルーのヴォーカルをじっくりと堪能出来る。
《クリスマスを我が家で~そり遊び》/イリアーヌ
イリアーヌというと、ボサノバチックなピアノが頭に浮かぶだろうが、この演奏も例に漏れずボサ・ナンバー。クリスマスにちなんだ曲ではあるが、前3曲のクリスマスクリスマスした雰囲気から少し離れた気分転換という趣きが強い。
《ウインター・ワンダーランド》/チェット・ベイカー
軽やかなテンポにのって、チェットのラッパが楽しめるナンバー。ピアノがラス・フリーマン、ドラムスがシェリーマン。1953年の録音。
《もっとメリー・クリスマス》/ベニー・グリーン
セロニアス・モンク作曲のナンバー。モンク本人が演奏した音源は聴いたはないが、曲想や独特のメロディ感覚は、まぎれもなくモンクそのもの。
ベニー・グリーンもかなりモンク的な和声を意識したピアノを弾いている。
《もっとメリー・クリスマス》/ダイアン・リーヴス
同じく、モンクの曲の歌付きバージョン。じっくりと歌い込むダイアンの深い歌唱が素晴らしい。2曲立て続けにモンクの重たいナンバーが続くわけだが、続けて聴いてもまったく食傷しない。
《もみの木》/ジョン・ハート
この「もみの木」という曲は、ドイツの古民謡。コーラスとリバーブを深めにかけたジョン・ハートのしっとりとしたギターが幻想的。
《ジングル・ベル》/カウント・ベイシー楽団
ノリノリ、ウキウキな気分にさせてくれるビッグバンドによる演奏。前半のベイシーの音数少ないピアノ、そして後半のブラスセクションの咆哮の対比が見事。まさに、ベイシー楽団!!としか言いようがないハッピー・スイング・ミュージックだ。
《チップマンク・クリスマス》/ジョン・スコフィールド
ジョン・スコフィールド・トリオによる演奏。1958年にヒットしたユーモラスな曲が、ジョンスコ流のちょっぴりビターなテイストに料理されている。
《ゴッド・レスト・ヤ・メリー・クリー・ジェントルメン》/ジョーイ・カルデラッツォ
ジョーイのピアノトリオによる演奏。元気に弾きまくるカルデラッツォのピアノを楽しめる。後半になればなるほどエキサイティング。
《ハヴ・ユアセルフ・ア・メリー・リトル・クリスマス》/デクスター・ゴードン
どっしりと腰の据わったバラード・プレイ。さすがデックス。ムーディかつダンディだ。最後に「ジングル・ベル」をチラリと引用するあたりが、デックスらしい。
《きよしこの夜》/ベニー・グリーン
ベニー・グリーンによるピアノソロ。重厚で安定した演奏だが、和音の重ね方にはゴスペルチックな匂いも。
《リトル・ドラマー・ボーイ》/リック・マーギッツア
リック・マーギッツアの元気の良いテナーサックスが楽しめる。と同時にマーク・ジョンソンのベースと、ピーター・アースキンのドラムによるストレート・アヘッドな現代的なシャープな4ビートも楽しめる。
ちなみに、選曲とライナーノーツの執筆は、行方さん。
「誰々の何とかという曲を聴いていただこう」というフレーズの連発が、今読んでも面白い。
記:2009/12/06
album data
YULE STRUTTIN' (Blue Note)
- A Blue Note Christmas
1.Vauncing Chimes/Bobby Watson & Horizon
2.Silent Night/Stanley Jordan
3.Christmas Song/Lou Rawls
4.I'll Be Home for Christmas - Sleigh Ride/Eliane Elias
5.Winter Wonderland/Chet Baker
6.A Merrier Christmas/Benny Green
7.A Merrier Christmas/Dianne Reeves
8.O Tannenbaum/John Hart
9.Jingle Bells/Count Basie
10.Chipmuck Christmas/John Scofield
11.God Rest Ye Merry Gentlemen/Joey Calderazzo
12.Have Yourself a Merry Little Christmas/Dexter Gordon
13.Silent Night/Benny Green
14.The Little Drummer Boy/Rick Margitza
#1 Bobby Watson & Horizon
Bobby Watson (ss,ts),Melton Mustafa (tp),Edward Simon (p),Carrollo Dashiell (b),Victor Lewis (ds) 1999/06/06
#2 Stanley Jordan (g) 1986年
#3 Low Rawls (vo),Hank Crawford (as),Richard Tee(p),Tinker Barfield (b),Chris Parker (ds) 1990/05/08
#4 Elliane Elias (p),Jay Anderson (b),Adam Nussbaum (ds) 1990/06/02
#5 Chet Baker (tp),Russ Freeman (p),Joe Mondragon (b),Shelly Manne (ds) 1953/10/27
#6 Benny Green (p) 1990/07/29
#7 Dianne Reeves (vo),David Torkanowsky (p) 1990/07/20
#8 John Hart (g) 1990/06/06
#9 Count Basie (p),Thad Jones,George Cohn,Lenny Johnson,Snooky Young (tp),Henry Coker,Benny Powell,Quentin Jackson (tb),Marshall Royal,Frank Wess,Frank Foster,Budd Johnson,Charlie Fowkes(sax),Freddie Green (g),Eddie Jones (b),Sonny Payne (ds) 1961/06/28
#10 John Scofield (g),Marc Johnson (b),Adam Nussbaum (ds) 1990/06/06
#11 Moey Calderazzo (p),Jay Anderson (b),Adam Nussbaum (ds) 1990/07/02
#12 Dexter Gordon (ts),Kirk Lightsey (p),David Eubanks (b),Eddie Gladden (ds) 1980/11/04
#13 Benny Green (p) 1990/01/31
#14 Rick Margitza (ts),Joey Calderazzo (p),Mark Johnson (b),Peter Erskine (ds) 1990/01/10