カフェモンマルトル

ジャズと映画と本の日々:高野雲

ジャズを聴き始めたキッカケ

      2016/01/29

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Monkのページの常連の方からの掲示板への書き込み。

 >皆さんはどのようにジャズと出会うのでしょう?

そうですねぇ、私がジャズを聴き始めたキッカケは……。

振り返ってみると、あまりにも他愛のないことなので、書くほどのことでもないのだけれど、まぁいいや、書いちゃいましょう。

私が「よし!ジャズを聴くぞ!」と決意したのは、ファッション誌に書いてあった一行の文章だった。

私が予備校生だった時分、JICC出版局(現・宝島社)から、『P-Style』という男性向けファッション誌が出ていた(現在は廃刊)。

確か2月号だったと思う、特集のテーマが「女の子がバレンタインに彼氏に贈る洋服」。

彼氏が普段聴いている音楽のジャンルごとに、ジャンルに合わせた服のコーディネイトを紹介している特集だ。

パンツと上着、そして帽子やカバンや傘などの小道具類一式が紹介されていた。まぁ、まともに全部揃えると10万は軽く越えてしまうようなラインナップなのだが、これを参考にコーディネイトを、ということなのだろう。

たとえば「クラシック」だと、シックなスーツと上質の布を用いた傘の組みあわせ、「ブリティッシュロック」だったら、派手めの上着に英国旗の柄をあしらったカバンと帽子とか。

その中で、パッと見た感じで、私の好みだった服装のコーディネイトが「ジャズ」だった。ブランドは忘れたが、シックなグレイか黒のスーツに白のYシャツとサングラス、確かそんな組み合わせだったような気がする。

コーディネイトの写真の脇には、それぞれ彼氏に贈る女の子からのメッセージというか手紙文形式のキャプションも添えてあって、その文章がなかなか良かった。

正確には思い出せないが、確かジャズのコーナーのキャプションには、
「ロックは卒業したさ。と、カウンターで煙草をくゆらせている意地悪で優しいあなたへ。」というような文章が添えられていた。

「ロックは卒業したさ」というフレーズが妙にカッコ良く感じられた(笑)。

また、「カウンターで煙草」「意地悪で優しい」というフレーズも、何となくハードボイルドチックで、「早く大人になりたい症候群」だった当時の私にとっては刺激的な一文だったことは確かだ。

ハードボイルドといえば、当時の『Hot-Dog press』(講談社)という雑誌には北方謙三の「試みの地平線」という人生相談のコーナーがあって(今でもやっているらしい)、北方謙三の本を読み漁っていた当時の私としては、毎号そのコーナーの扉にある北方謙三の「若者へのメッセージ」は欠かさずチェックしていたものだが(悩み相談そのものはクダラな過ぎて読んでいなかった)、ある号に書いてあったフレーズを思いだした。

「俺はクルマに女を乗せると、必ず古いジャズを大音量で流す。流行りものの音楽でないことに不満を漏らす女もいる。

しかし、やがてその女もジャズを聴きいるようになり、俺は少しだけイイ女になったな、と微笑む」といったような、今思い出すとカッコよすぎて恥ずかしい文章なのだが(笑)、そうか、やはりハードボイルドにはジャズは欠かせない要素なのだな!と妙に納得してしまった。

で、「よーし、ジャズを聴くぞ!」となったという……。

すごく単純だ(笑)。

翌日、兄がジャズマニアだいう予備校の友人に「ジャズ聴こうと思うんだけど、何がいい?」と尋ねたら、翌日貸してくれたテープが、ビル・エヴァンスの『ポートレイト・イン・ジャズ』と、ロン・カーターの『ロン・カーター・プレイズ・バッハ』だった。

ロン・カーターはベース・ソロな上に、題材がクラシックだったので、聴いていてもあまりジャズという感じはしなかたのだが、『ポートレイト・イン・ジャズ』は、まさに私の思い描いていた「大人」の世界だった!

当時の私はまだベースは弾いていなかったが、ジャパンのミック・カーンやブライアン・イーノのアルバムで時々耳にすることの出来るパーシー・ジョーンズのエキセントリックなベースプレイは大好きだった。

彼らの、一言で言えば「動くベース」「派手なベース」に心奪われていた耳が、まず『ポートレイト・イン・ジャズ』の「よく動くベース」に反応した。

なるほど、ジャズって難しい音楽っていうイメージがあったけれど、本当にこのベースは動きまくって難しそうだなぁ、さすがジャズだわい、と嬉しくなってしまった。

もっとも「動くベース」が即、難しいというわけではないことは、ベースを弾いているうちに分かってきたことだが、当時の私としては「動くベース」=「難しいことやってる」だったのだ。

ドラムも8や16ビートとは全く違った面白いリズムの刻みをしている。しかも、この「シュッシュッ」という紙をこすったような音ってなんなのだろう?

このアルバムのベーシストはスコット・ラ・ファロで、当時としては革新的なベース奏法だったこと、ポール・モーチアンのドラムはスティックではなくて、ブラシで叩いていることなぞ全く知る由もなく、「ジャズ」って面白いな、夢中になりそうだぞ、と胸をワクワクさせた。

早速CDを購入しようと、タワーレコードのジャズコーナーでビル・エヴァンスのコーナーをチェックすると、ジャケットがまた素晴らしい。

大学教授を彷佛させる知的なエヴァンスの風貌にノックアウトされた。

うーん、「大人」ってこういうことを言うのね。

アホみたいに、一人でブツブツ独り言を繰り返しながら、CDをレジに持っていったものだ。

そして、このビル・エヴァンスを機に徐々に足を踏み入れるようになって……。

ジャズ喫茶でバイトしたり、大学ではジャズ研に入り、ベースを始めてジャズを習いにいったり、と確実にジャズ中心生活に移行して……現在に至っております。

外見の「何だかよく分からないけど、カッコよさそう」なイメージからジャズに入門したという、非常に軽薄な動機でした、私の場合。

性格がよく出ていますね(笑)。

記:2000/05/04

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