カフェモンマルトル

text:高野雲

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天国の本屋~恋火/試写レポート

      2016/04/17

tengokunohonya

さわやかな余韻の残る作品だった。

うん、余韻だね。

観ている間よりも、観たあとに、記憶の断片を転がすほうが楽しい。
うん、断片でいいのだ。
ストーリーや設定はお伽話チックの最たるものだから、最初から最後までストーリーを頭の中でなぞらずとも、断片断片が既に“世界”だから、いくつかのシチュエーションを思い出すだけで、すでにこの映画の“世界”に頭のモードは変換されているはずなのだから。

“天国”という設定の北海道の美しい景色、本屋の店長・原田芳雄のアロハシャツ、結構高い天井と、朗読用の広い舞台を持つ本屋さんの内装、真冬の夜空に映える花火…。
これらの映像の断片のいつくかを脳の中で転がすことが出来れば、間違いなくあなたの心の中にこの映画は入り込んでいるし、忘れることはないだろう。

主役の竹内結子も玉山鉄二も好演。
とくに、“タマさま”こと玉山鉄二の演技には全く期待していなかっただけに、彼に対してのポイントも予想以上にアップした。
結構いい奴じゃん、彼(笑)。

先日、朝のワイドショーで竹内結子は、昔の女優にたとえると夏目雅子のようだと誰かが言っていたが、私は違うと思う。演技の力強さと堅実さ、そしてルックス、役どころなどから受ける印象は、夏目雅子よりもむしろ“さびしんぼう”を演じた富田靖子だ。
ま、どうでもいいことだが…。

玉山鉄二の演技はよかったが、ピアノを弾くシーンがちょっと……。
玉山鉄二とピアノの距離が離れすぎだったのが残念。
距離というと語弊があるか。体とピアノの物理的な距離ではなく、体も心もピアノという楽器に入り込んでいない感じがし、彼がピアノを弾いているシーンを見ても、実際は違う場所からピアノが聞こえてくるようでならなかった。つまりピアノを弾いているようには見えないのだ。
実際は、“手パク”ではなく、本当に弾いているのだけど。
暇を縫ってピアノを猛特訓した成果が、“音”には現われているけれども、“演技”には現われていないというか。本当に弾いているだけに、とても勿体無いと思った。弾いていないのに、弾いている演技の巧い役者もいるのだから。

劇中の鍵を握り、なおかつクライマックスに使われる『永遠』は力強い曲だ。
ピアノソロよりも、オーケストラ形式で演奏されるとより一層映えることだろう。それだけに、花火のシーンにあわせてピアノ一台で演奏されるこの曲が少し物足りなかった。
たしかに、力強い曲だし、中盤ではガンガンと力強く打鍵する箇所も出てくる。
しかし、もう一方の鮮烈な花火(恋火)の力強さとのぶつかりあいの中では、どうしても花火の力強さが勝ってしまう。
ここではむしろ、センチメンタルな曲調のほうが合っていたのでは?などと余計なことを考えるのは私だけか。試写会会場から出た後、晴れた青空を見上げながらなぜだか村松健のピアノソロの旋律を口ずさんでしまった私。

観た日:2004/04/19

movie data

製作年 : 2004年
製作国 : 日本
監督 : 篠原哲雄
出演 : 竹内結子、玉山鉄二、香里奈、新井浩文、香川照之、原田芳雄 ほか
配給 : 松竹
公開 : 2004年6月5日~

記:2004/04/22 

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