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ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

細野晴臣『フィルハーモニー』の《エア・コン》にゾッコン

      2018/04/23

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細野さんのソロアルバム『フィルハーモニー』は30年殺しのアルバムであるというような記事を以前書きましたが、その後も折にふれて聴き続けておりまして、気がつくと、もはや「36年殺し」の次元に突入しつつありますね。

このアルバムが発表されたのは1982年の5月ですから。

参考記事:フィルハーモニー/細野晴臣

時期ごとに好きな曲はクルクルと変わってはいるのですが、最近ゾッコンなナンバーは、ラストの《エア・コン》。

空調機のエアコンを指すのではなく、細野さんが『YMOブック』に書いていた内容だと「大気の状態」をイメージした曲のようですね。

このとりとめもない旋律が、なんとも細野さんらしくてすごく良いのです。

YMOが散会した1年後に細野さんは、『S-F-X』というアルバムを発表しますが、このチャキチャキしたタイトで脳みそが痙攣するような32ビート(64ビート?)の打ち込みサウンドのラストを飾る《星の暗黒面(ダークサイド・オブ・ザ・スター)》という曲が私は好きなんですよ。

深みのあるピアノの音は、当時、発表されて間もない高級シンセサイザー・カーツウェルが発する音色だと思うのですが、まるで旋律の一筆書きのようなとりとめもないメロディの流れ、そして、まるで鍵盤の1つ1つを慈しむように、あるいは慎重に音を紡ぎだされるかのような音の組み合わせに触れると、自然と心の中の居ずまいを正すような微妙な緊張感をもたらすと同時に、和みの要素も提供してくれるのです。

特に大きな盛り上がりも、曲の中における「ヘソ」のような箇所もなく、一定したリラックスした雰囲気が終始続いて、いつの間にか曲は終わるのですが、この「とりとめのなさ」は、『フィルハーモニー』のエアコンにも共通しているように感じます。

エアコンの場合はピアノの音色ではなく、おそらくはサンプリングをしたブラス系の音色で取りとめもない旋律がゆらりと中空を飛び交っているのですが、この音色とメロディが、なんともおおらかで、不思議なリラクゼーション効果をもたらしてくれるのですよ。

《スポーツマン》や《フニクリ・フニクラ》だけで盛り上がっているうちは、まだまだ甘いソ。
『フィルハーモニー』は、ラスト2曲の《フィルハーモニー》と《エア・コン》を極めてこそ、真の「フィルハーモニスト」なのである。
なんて、私が勝手に思っているだけですが。

記:2018/03/20

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>>S-F-X/細野晴臣

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