カフェモンマルトル

text:高野雲

*

ベースソロ ライブ「模造された男」 in 六本木 2001/09/09 

      2016/03/24

hitokage

ベースソロのライブをやった。

エレキベースのソロのライブだ。

ウッド・ベースを購入してからというものの、特にその思いは強くなったのだが、ウッドベースの音色は、温かみ、深み、存在感、空間の包容力が、エレキベースの音色とはとは全く違う。

楽器の「単音」で音色を比較した場合、ウッドベースの一音とエレキベースの一音はまったく音色の「立ち方」が違う。

だからといって、ウッドと比較してエレキが悪いというわけでは毛頭ない。

それぞれの特性に応じた良さというものはあるのだし、エレキベースの良さだってたくさんある。

しかし、「楽器単体」から発せられる「一音」の深みに関しては、ウッドベースの方に軍配があがると思う。もちろん、私の好みでの話だが。

よって、ソロでベースを奏でるのならば、一度ウッドベースの音色の良さを経験してしまうと、なかなかエレキ・ベースでソロをやろうとは思わなくなってしまう。

ウッドベースと比較すれば、エレキベースの音色はたしかに味気ないものだが、だったら飛び道具をかましてしまえ!

ということでやったのが、今回のベース・ソロライブ「模造された男」だ。

人前で、一人でなにかをやりたかったんだよね。

「飛び道具」とは、すなわち、エフェクターのことで、ベース用のコーラスとアナログ・ディレイを繋げてみた。

もとより私は、あっちもベースも「ナマでやらせろ!」な「ナマ派」なので(もちろん冗談です)、エフェクターを繋げることには抵抗があるし、エフェクターをつなげばつなぐほど、道具を使うことによって、自分も聴き手もダマしているんじゃないか、という妙な罪悪感を持ってしまうタチなのだ。

しかし、それは、あくまでアンサンブルの中の一員としてベースを弾くときの話。

一人でベースをパラパラ弾くんだったら、積極的に面白い音を作って弾いたほうが面白いと思っている。
単調になりがちなベースの音色に変化をつけるために、演奏の随所に、足許のスイッチをオンにしたりオフにしたりと、音色的なメリハリをつけていった。

とくに、フレットレス・ベースの「甘い音」と、アナログ・ディレイは良く似合う。

暖かくて、自然で、伸びやかな音色が出てくるので、私はソロを取るときはよく使っている。

暖かいエコーによって、自分の腕が25%増しでうまくなったと錯覚してしまうので、ちょっと怖いのだが……。

『模造された男』というのは、平成版ウルトラセブンの6部作の中の第4話のことだ。

人間の手によって復元されたキングジョーが登場する話で、私はこの話のセブンとキングジョーのバトルのシーンが大好きなのだが(こちら参照)、今回のソロライブは、この話の鍵を握る、石立市の寺院に突如として現れたオーパーツ「ラハカム・ストーン」をイメージしようと思った。

「ラハカム・ストーン」といえば、個人的には、なんとなく「E♭」を感じてしまうので、冒頭の音は「E♭」の音だけを、短く断続的に弾き続けよう、ということだけを決めて本番に臨んだ。

店の女の子に、演奏をはじめて20分ぐらいたったら、さり気なく合図をしてね、とお願いしておいた。夢中になってくると時間を忘れて猿のように弾きまくってしまいそうだからだ。

最初に「E♭」の音を27回ぐらい弾いたことまでは覚えているが、あとは、何を弾いたのか全然覚えていない。

店の女の子から合図があるまでは、とにかくその場その場の思いつきで、どんどんと自分の世界にのめり込んでベースを弾いていた。

ただし、自分の背中にビデオカメラを設置して客席の様子を撮影していたので、後で演奏した音を聴き返してみると、自分にしてはなかなか良かったと思う。

画面左半分に私の背中、後頭部、忙しく動いている右腕が映し出され、画面の右半分に暗闇の中に浮かび上がるお客さんたちの顔が見える。

なかなかシュールな映像だ。

演奏の音を聴くよりも、客席のお客さんの顔を映像で観るほうが面白かった。

みんな不安そうな顔、お化け屋敷のお化けを観ているような顔、動きがまったくなく硬直しているのだから(笑)。

記:2001/11/16(from「ベース馬鹿見参!」)

 - 音楽 , ,