カフェモンマルトル

text:高野雲

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デイ・ブレイクス/ノラ・ジョーンズ

   

DAY BREAKSDAY BREAKS

ドライなウェット感

カーペンターズが古き良き時代のアメリカの「和み」と「潤い」を表出しているのであれば(それがたとえステレオタイプなイメージに基づくフィクショナルなものだとしても)、最近のノラ・ジョーンズの音楽は、21世紀のアメリカの「和み」と「潤い」を表出しているのではないかと感じる。

もっとも、その「潤い」の質はかなり違っていて、カーペンターズの70年代がかなりウェットだとすると、ノラの潤いはもう少し乾いている。ドライな潤いというか。

それにプラスして、アメリカンドリーム的な「明るく希望に満ちた未来」は影をひそめ、そのかわりに、どこかため息と諦観が混じるアンニュイさをも称えているのも特徴。たとえば、このアルバムでいえば《アンド・ゼン・ゼア・ワズ・ユー》が醸し出す空気のような。

ノラは作品を発表するごとにドライの成分が強まってきており、ファーストアルバムの『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』は、今聴き返すと、かなりモイスチャー度が高かった。

もちろんそれは楽曲のアレンジにもよるところが大きいのだろうけれども、『フォール』やウォン・カーウェイ監督の映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』以降のノラは、ソリッドな曲の強度が増しているようにも感じる。

たとえば、このアルバムの《フリップサイド》なんかは、かなりソリッドなロックを感じるよね。
とはいえ、ドラムとリズムが8ビートなことと、ベタなサビがロックを感じるだけで、そこに絡むオルガンやピアノはもろジャズしているんだけども。

アルバム全体を覆う「ビターな潤い感」は、歌心がありつつも乾いた音色とドラミングを貫くブライアン・ブレイドのドラムの貢献度が高い。

うねるベース

私は『マイ・ブルーベリー・ナイツ』の《ザ・ストーリー》というナンバーが好きなんだけれども、その大きな理由が骨太の太いベース。

これと同様に1曲目の《バーン》の終始うねり続けているベースも素晴らしいと思う。

同様に、執拗なリフレインで終始うねり続けている《イッツ・ア・ワンダフルタイム・フォー・ラヴ》や《スリーピング・ワイルド》も良いよね。

特に《イッツ・ア・ワンダフルタイム・フォー・ラヴ》は、出だしの曲調にそこはかとなく《ネイチャー・ボーイ》を感じるダークなナンバーだが、マイナーテイストな曲調が好きな人にはたまらないナンバーなのではないだろうか。

魅力的な楽曲群

乾いたドラムに、うねるベース。
楽器が構築する音空間がこのアルバムのテイストを大きく支配はしているものの、メロディやコード進行の流れに魅力を感じるナンバーもある。

たとえば、《トラジェディ》や《デイ・ブレイクス》のように、ほっと一息つける和みのメロディのナンバーもあり、これらの楽曲はアメリカ的というよりは、80年代のブリティッシュポップス、もしくは北欧のポップスが好きな人にも訴求度が高いのではないかと思われる。

また、《ワンス・アイ・ハッド・ア・ラフ》や《キャリー・オン》などは、デビュー当時から変わらぬノラのテイスト。これらの楽曲は、デビュー当時からのファンは、安心して聴けるのではないだろうか。

ちなみに、このアルバムは、ウェイン・ショーターもソプラノサックスで参加している曲もあったりと、じつはパーソネルを見ると、隠れ豪華キャストも何人かいたりする。
特にショーターの存在感は強烈で、あえてどの曲かは書かないけれども、聴けばすぐに気づくはず。

どこで、どんなカタチでノラの歌に絡んでいるのかを耳で探すのも楽しいアルバムだ。

Album Data

Day Breaks (Blue Note)
- Norah Jones

1.Burn
2.Tragedy
3.Flipside
4.It's A Wonderful Time For Love
5.And Then There Was You
6.Don’t Be Denied
7.Day Breaks
8.Peace
9.Once I Had A Laugh
10.Sleeping Wild
11.Carry On
12.Fleurette Africaine (African Flower)

Norah Jones (vo,el-g,Hammond B3,piano,vocals,Wurlitzer el-p)
Vicente Archer (b)
Brian Blade (ds)
Jon Cowherd (Hammond B3)
Sasha Dobson(background vocals)
Dave Eggar (cello)
Dave Guy (tp)
J. Walter Hawkes (tb)
Dan Iead(pedal steel guitar)
Katie Kresek (vln)
Max Moston (vln)
Max Moston (vln)
Todd Low (viola)
Tony Maceli (b)
John Patitucci (b)
Leon Michels (ts)
Catherine Popper (vocals)
Peter Remm (el-g, Hammond B3)
Karriem Riggins (ds)
Daniel Sadownick (per)
Tony Scherr (el-g,background vocals)
Wayne Shorter (ss)
Lonnie Smith (Hammond B3, background vocals)
Petter Ericson Stakee (background vocals)
Chris Thomas (b, el-g)
2015年

記:2016/10/22

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