カフェモンマルトル

text:高野雲

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FRENZY/大沢誉志幸

      2016/11/08

FRENZYFRENZY/大沢誉志幸

かすれた、スィートなヴォイス。
この絶妙なバランスが、大沢誉志幸の魅力と私は思う。

都会的なセクシーさを、声色だけで色濃く漂わせているたぐいまれなるシンガーだ。

ありがちな話だが、高校時代の私は《そして僕は途方に暮れる》で彼を知った。
当時、流行っていたからね。
いい曲だとは思ったけれども、正直、グッとこなかった。

彼の魅力に気付かせてくれたのは、当時付き合っていた彼女のせい、いや、彼女のお陰なのデス。

でも、気付くのには時間かかったよ。

だって、ディズニーランドとかにデートいくでしょ?
スペースマウンテンとかに並ぶじゃないですか。
彼女はウォークマンのイヤフォンの片方を私の耳に突っ込み、もう片方を自分の耳に突っ込む。で、手をつないで、二人で大沢誉志幸を聴く(笑)。

で、彼女がお気に入りのアルバム『まずいリズムでベルが鳴る』がかかるわけなんだけど、雑踏の中で、片方だけのイヤフォンから聞こえてくるのって、無機質な打ち込みビートだけなんですよ。

歌詞や歌が聞こえないからボリュームを上げるでしょ?
そうすると、ますます打ち込みドラムの音がハンマービートのごとく耳を襲ってくる(笑)。
ウォークマンで聴くには不向きな音楽だなーと、思った(笑)。

だから、ある日彼女はレコードをドッサリと持ってきて、私に渡した。
「聴いてね」って。
で、すべてカセットテープに落として、聴きまくりました。
で、やっと分かった。
彼の魅力を。

タイトな過激さと、辛口なスイートさが同居している。

それって、歌詞の世界もそうなんだけどさ、これって、むしろ彼のかすれた独特な声の質に出ていると思う。

とくに、バラード調の曲は、ソウルミュージックには絶対そんな曲調のものはないんだけれども、それでもどこかソウルミュージックに通じる甘さが、ほんのりと滲み出ているんだよね。

かなり、80年代のテイストが混ざってますが。当たり前だけど。

このベスト盤で言うと、《宵闇にまかせて(kiss&kiss) 》、《CAB DRIVER》、《スロウダンス》あたりでしょうか?

そういえば、この3曲、連続しているな。
アップテンポの曲と曲の間に挟めばもっと効果倍増なのに……。

ま、それはいいとして、《CONFUSION》のような、ハンマービートのような、打ち込みのドラムのミックスが大きめの曲ってあんまり入っていないなぁ。

ま、彼の長いキャリアをツボを抑えて編集されているのだから、それはそれで仕方がないのだけれども。うん、選曲のバランスはいいよ。

でもね、一つだけ不満を言わせてもらうと、やっぱり、《まずいリズムでベルが鳴る》が入っていないのは、いかがなものか?

ま、個人的な思い出っていうこともあるけれども、この曲こそが、初期の大沢誉志幸の傑作だと私は思っているからね。

●収録曲
1. 彼女には判らない(ホワイ・ドント・ユー・ノウ)
2. Jokeでシェイク
3. スロウダンス
4. 宵闇にまかせて(kiss & kiss)
5. Scoop
6. CONFUSION
7. その気***(ミステイク)
8. CAB DRIVER
9. まずいリズムでベルが鳴る
10. そして僕は途方に暮れる

記:2009/12/12

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