書店ガール 感想~最後は居酒屋でビールが飲みたくなる!

      2018/08/25

syoten

ドラマの原作読んでみた

渡辺麻友と稲森いずみ主演のドラマの原作、碧野圭・著の『書店ガール』を読んでみました。

その感想と雑感などをつらつらと書いていきます。

オリオン書房

舞台となる「ペガサス書房」。

これって、立川を拠点にチェーン展開している「オリオン書房」を模したネーミングなのかな?

オリオンもペガサスも、ギリシア神話に登場するキャラクターですからね。

●オリオン書房のHP
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オリオン書房といえば、懐かしいなぁ、たしか当時はノルテ店の文芸担当の方と、六本木に飲みにいったことがあるんですよね。

その方は、ジャズが好きで、しかもハードバップや大西順子のこともよく知っていて、話がめちゃくちゃ合って、二軒目の店では楽器弾いたり歌ったりと、とても楽しかった思い出があります。

ちなみに、オリオン書房がある立川は中央線沿線の駅ですが、『書店ガールズ』に登場する「ペガサス書房」は吉祥寺にあります。

同じく中央線沿線ですね。

ペガサス書房

『書店ガール』の舞台となる「ペガサス書房」は、キャバレー含む飲食店などで働いて苦労に苦労を重ね、飲食店系チェーン店のオーナーが作った店です。

現在は、旗艦店となる荻窪店ほか、都内には20店舗前後の店があるという設定のようですね。

なぜ、飲食店のオーナーが書店を作ったのかというと、飲食の文化で成功すると、今度は「文化」「教養」のテイストが欲しくなったのか、先代のオーナーは書店事業を始めます。

最初に立ち上げた一号店が吉祥寺の「ペガサス書房」。

そして、「憎きオヤジ」が作り、そこで若い頃には重労働を強いられた「二代目社長」が、「悪しき思い出の場所」として、潰したがっているのも、このペガサス書房の一号店です。

主人公の西岡理子さんと小幡亜紀ちゃんが働いているのもこの店です(2巻目からは別の書店に移りますが)。

ペガサス書房のモデル店は?

飲食店(喫茶店)部門と書店部門がある吉祥寺の書店といえば、「ブックス ルーエ(BOOKS RUHE)」を思い出しますね。

もしかして、「ペガサス書房」のモデルは、「ブックス ルーエ」なのかな?

ちなみに『エヴァンゲリオン』で、綾波レイが読んでいた本のブックカバーは「ルーエ」のものです。

私はこの書店、大好きでした。

出版社勤務時代は、1週間と空けずに通っていたものです。

吉祥寺の商店街の中にある店らしく、客層は一言「雑多」です。

買い物中のおばちゃんから、学校帰りの若者、そして夜はお勤め帰りのサラリーマン。

好みの違う様々なターゲットに向けて、限られたスペースをうまく使って偏りのないようバランスの良い品揃えをしているところが魅力の書店です。

いつも混んでいて、あまり長居は出来ないのですが(地下フロアは長居できるかな)、ささっと「世の売れ筋・トレンド」をつかむには、なかなか好都合な書店なんですね。

●BOOKSルーエのHP
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吉祥寺 ブックスルーエ

「ブックス・ルーエ」は、吉祥寺の商店街の中にある店ですが、この商店街の横道にちょっと入ったところに「ホープ軒」があって、「ルーエ+ホープ軒」というのが私の中のお決まりコースになっていましたね。

プラス、ホープ軒でラーメンを食べた後は、ジャズ喫茶「メグ」で昼寝という「デザート」も欠かせませんでしたが。

だから、私が『書店ガール』を読んでいるときは、吉祥寺の町並みやルーエのある商店街の風景がありありと思い浮かぶんですね。

しかも、著者の碧野さんは、以前は出版社勤務だったということもあり、書店の売り場の現場や本に関しての痒いところの描写や薀蓄が多く、ニヤリとさせるところが多いのです。

書店にお勤めの方だったら、私以上にニヤリとかヒヤリがあるのではないでしょうか?

大型チェーン店が吉祥寺に進出してくる噂のエピソードなど、啓文堂書店のことかな?などと想像の翼をはためかせながら読んでました。

ちなみに、先述した「ブックス ルーエ」の文芸・カルチャー担当の方は、私が20代の時は、かなり意気投合して、呑みに行ったり、高円寺文庫センターの店長の家で潜水艦ゲームをして遊んだりしていました。

そういえば、彼の結婚式の二次会にも出席させていただいたっけ。

そんな彼も、数年前から吉祥寺に進出してきた大型書店の店長になったりしているので、性別は違えど、なんとなく小説とリアル世界の話が微妙にシンクロしているような気がします。

飲食店系書店の書店員⇒大型チェーン店に転職して店長

というような流れがね。

書店員 転職

もっとも、書店業界は人の流れが激しいようで、この件に限らず、面識のある書店員の方が、別の書店で働いていて「あれ?店辞めて、こっちに移ってきたんですか?」というようなことはよくありました。

やっぱり皆さん、本が好きなんでしょうね。

退職しても、やっぱり再就職の先は本があるところ。

本に囲まれた職場で仕事をしたいという気持ちや、これまで培ってきた自身の書籍に関する知識を役立てたいという思いもあるのでしょう。

書店販売の世界は奥が深く、商品知識のみならず、本の置き方・並べ方や、発注の仕方など、覚えなければならない様々なノウハウは一朝一夕で身につくものではありません。

ですから、書店側としても、まったく知識のない人よりも、書店における仕事に関する知識と経験を持った「即戦力」となる人材を採用したいのでしょう。

ですから、前の書店を退職しも、ブランクを開けず、すぐに別の書店で働きはじめる方も多いですし、あとヘッドハンティングもあるのでしょうね。

たとえば、もうかなり昔のことですが、リブロ西武池袋店の人文書担当の女性が、ジュンク堂の店長としてヘッドハンティングされた話は、業界の中ではかなり有名な話でした。

人間関係 ドロドロ

さて、書店ガールズ本編に関してですが、タイトルが書店「ガールズ」なだけに(『ブックストア・ウォーズ』の改題ではありますが)、書店で働く女性が主人公。

個人的には、前半から中盤にかけての人間関係のドロドロが、なんだかイヤ~な感じでした。

職場のイヤがらせもなんだか低レベルで幼稚だし、ここは小学校かよ!と突っ込みを入れたくなってしまうほど。

書店で働くことに憧れていた人が読むと、「え~、書店ってこんなに人間関係ドロドロなの?」と誤解してしまいそうですが、人間関係ドロドロなのは、なにも書店だけではないし、これは、あくまで「ペガサス書店」という小説の中の架空の書店の中の話なので、これを読んで書店で働きたくないとは思わないでくださいね♪

小さな本屋さん

しかし、大きな書店でのドロドロ人間関係で、ウンザリしている気分を、ほっとさせてくれるエピソードが数箇所挿入されています。

それは、副店長(後に店長)の理子さんが、子どもの頃から通っていた街の書店のオジさんと、理子さんとのやり取りです。

この店は、おじさんが一人で切り盛りしている小さな本屋さん。

店主のおじさんは、お客さんの好みを把握していて、常連さん好みの本を仕入れて、棚にそっと差しておいたり、また、あるときは「これ読んでみたら?」と薦めてくれることもあります。

理子さんは、昔から悩んだとき、困ったとき、そして物語の中でも何度か、気分が滅入ったときに、この店に立ち寄り、心が癒されます。

なんだか、こういうお店っていいですね。

この小さな書店の話は、本筋とは関係のないエピソードなのかもしれませんが、物語が一本調子にならないために挿入された、カツ丼に対しての「お新香」的な役割を果たしていると思います。

というより、私なんかは、この「お新香」だけでも、ご飯3杯ぐらいいけちゃうぐらい好きです。

女性蔑視オヤジ

そういえば、最近、『問題のあるレストラン』というドラマが無事最終回を迎えましたが、このドラマに登場するオトコたちって、ロクでもない奴が多くて、見ていてホント、いらいらしたものですが、『書店ガール』にもイライラさせる男たちが登場します。

女性が主人公の物語に「女の敵」として登場する男キャラでありがちなステレオタイプは「女のくせに生意気だ」「女に仕事ができるわけない」と言ったり、そういう態度を取るオッサン。

例にもれず、『書店ガール』にも登場しますよ。

私はべつに女性の肩を持つわけではないのですが、オトコとしても、こういうタイプは、ほんと大っ嫌いですね。

こういうオッサンは、女性に対しても女性蔑視的な言動を取るだけではなく、男に対しても強い者には媚び諂(へつら)い、弱い者には居丈高 &傲岸不遜な態度になることが多いのです。

だから嫌い。

私も、オッサンと呼ばれる年齢ではありますが、こういう人種とは同じ空間にいたくない。

だって、口臭臭いこと多いし(笑)。

さらに態度だけではなく考え方も保守的、というより、新しいことを面倒臭がる傾向がある。

変化を嫌う現状維持志向。

だから、その人の半径3mの空気も停滞しているため、一緒にいたくないのです。

だって疲れるから。

私は長らく出版社に勤めていたので、職場の環境というか雰囲気というか空気そのものが、「常に新しいことにトライしよう」「新しい企画を探そう、考えよう」「絶えず情報発信をし、社内にシェアをしよう」「そうじゃないやつはクズ」みたいな感じだったんですね。

だから、そういう雰囲気に適合できない人は、どんどん辞めていきました。

年は関係なく、若い人でも、2~3ヶ月で辞めていった人もいます。

ですので、上司や取締役のような年配の方々も、いや、年上の社員になればなるほど、新しいもの好きで、常にアンテナを張り巡らせていたように記憶しています。

私は、どちらかというと流行には疎く、そのうえ50年代のジャズが一番好きという保守保守な気質の人間なのです。

しかし、そういう環境で十数年間働いていると、やっぱり「朱に交われば……」ではありますが、趣味とは別に、仕事モードにおいての思考パターンは、新しいことにチャレンジすることが好きな気質にいつのまにかなってしまっているようです。

だからこそ、ドラマや小説に登場するような典型的な「保守的・女性蔑視オッサン」を見ると、このようなタイプの年上が周囲にはいなかっただけに、むくむくと反発心がもたげてくるのです。

だからこそ。

理子さんが、店長会議で社長の腰巾着オヤジを困らせたシーンや、書店員一同が力を合わせて売り上げアップに努力する物語後半は、「頑張れ!」と応援していましたね。

あと、書店員の停滞した沈うつなムードの喝を入れた亜紀ちゃんのシーンなんかも好きですね。

ドラマでも、もしこのシーンがあるのなら、亜紀ちゃん役のまゆゆ(渡辺麻友)は、思いっきりキレまくって欲しいですね。

ビールが飲みたくなるラスト

そして、最後はマンガチックな終わり方かもしれませんが、こういう王道パターン的なエンディングもいいんじゃないかと思いました。

なにしろ、読了後には猛烈に居酒屋でビールを飲みたくなるんだから。

いつの間にか、自分も書店員となり、物語中の書店員たちとともに働いていたからなのでしょう。

だからこそ、一緒に頑張って働いていた仲間たちと、居酒屋で「お疲れさまでした!」と、ビールで乾杯したくなるのかもしれません。

記:2015/03/28

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