オラトゥンジ・コンサート/ジョン・コルトレーン
命を削るかのごとき咆哮
「鶴の恩返し」って昔話をご存知でしょう?
それです。これは。
ツルは、恩返しのために、自分の身を削って美しい反物を作ったじゃないですか?
そして、“彼女”は身を削りつくす前に、正体がバレたので、空に還りました。
コルトレーンの場合は、恩返しのためじゃないとは思うけれども、自分の身を削って壮絶な音を放ち続け、ついに全部削っちゃたので、天に還りました。
コルトレーンが亡くなる3ヶ月前の演奏です。
コルトレーン、そしてユセフ・ラティーフとババトゥン・オラトゥンジの3人が主催し、共同出資した、“アフリカの偉大な文化遺産を伝承しよう”という趣旨の『イン・ザ・ルーツ・オブ・アフリカ』コンサートでの演奏です。
もちろん、コルトレーン本人は3ヶ月後に天に召されることなどは知らずに演奏していますが、3ヶ月後に死んでしまったことを知った我々がこのサウンドを聴くと、どうしても、悲壮感、非痛感が漂って聞こえてしまうのです。
演奏回数を重ねれば重ねるほど過激かつ高密度になってゆく、いつもの《マイ・フェイヴァリット・シングズ》。
とにかく、熱く、温度の高い演奏なのです。
悲壮、悲痛といえども、この感じ、なんていうのかなぁ、「頑張れぇ!」と応援したくなるような感じでもあり、たとえて言うなら、ウルトラセブンの最終回。
モロボシダンがセブン上司の反対を振り切り、アンヌ隊員を地面に押し倒し、アマギ隊員を救うために変身し、満身創痍のまま改造パンドンに最後の戦いを挑むシーンですね。
やっとのことで勝利を収め、西の空に飛び立っていたセブンは一筋の星になりますが、コルトレーンも空のどこかで星になったのかもしれません。
コルトレーン星。
あったとしたら、滅茶苦茶温度高そうですが。
記:2004/08/14
album data
THE OLATUNJI CONCERT (Impulse)
- John Coltrane
1.Introduction by Billy Taylor
2.Ogunde
3.My Favorite Things
John Coltrane (ts,ss)
Pharoah Sanders (ts)
Alice Coltrane (p)
Jimmy Garrison (b)
Rashied Ali (ds)
Algie DeWitt (Bata drum)
Jumma Santos (per)
1967/04月