メイキン・ザ・チェンジズ/ジャッキー・マクリーン

   

マクリーンらしさに溢れたアルバムだと思う。

じゃあ、マクリーンらしさとは何かというと、説明するのが難しい。

語弊があるかもしれないが、一言で言ってしまえば、「味」。

そして、ともすればマイナス要因となりがちな要因を、情熱と勢いで、プラスに転化させてしまう気迫と熱気、とでも言うべきか。

たとえば、音程。

マクリーンのアルトの音程は、ピッチがぶら下がっている。つまり、正しいとされている音程よりも、少し下がり気味の音程で彼はアルトを吹く。

そして、音色。

美しさの基準は人それぞれなので、美しくない音色とは言わないが、少なくとも澱みの無い音色とは言いがたく、どちらかというと、ちょっとくすんだ感じの音色だ。

さらに、フレージング。

パーカーのように滑らかでもなければ、流暢でもない。どこかモタついたところがあったり、詰まったところもある。引っかかりを感じることさえもある。

だけど、不思議なことに、それらがすべてイイ!と感じてしまうのだ。

これらの要因を補って余りある熱気と、演奏に取り組む真摯な姿勢が、演奏全体から強く伝わってくるのだ。

演奏上の欠点ともなってしまうかもしれない要因が、逆に快感へと導く、重要なファクターとなるのだ。

これが、マクリーン的快感。

結果、このマクリーンならではの個性に目覚めると、マクリーンのアルトが無性に愛しく感じるようになる。

ジャズを知らないクラシック畑の人からは、
「へぇ~、技術の無さを、ジャズという音楽では、“味”という便利な言葉で評価するんだね。ジャズって随分イイカゲンな音楽なんだなぁ」
などと言われそうだが、そして、実際、そのようなことが書かれているサイトもあったが、「ハイ、その通りです」としか返しようがない。

もっとも、モノは言いようで、“イイカゲンな音楽”という言い方ではなく、多様な価値を認める“懐の深い音楽”と言って欲しいものだが……。

そして、“マクリーンらしさ”とは、“ジャズのおいしさ”と直結する。

ズレや、詰まり。

このような、ある種“不完全なひっかかり”も、ジャズをより一層、魅力的なものに仕立て上げる要素の一つではないかと思う。

引っかかるけど、熱い。一生懸命だ。

この熱さと、甘美さの入り交じったプレイこそが、マクリーン、ひいては、ハードバップにおける一番オイシいエッセンスなのだと思う。

そして、このアルバムのマクリーンにはそれがある。

一生懸命アルトを吹いているマクリーンの姿を映しだしたジャケット写真は、彼のひたむきな音楽の内容をそのまま語っているようではないか。

熱いプレイを繰り広げる、ホーキンスのオリジナル《ビーン・アンド・ザ・ボーイズ》、そして、不器用に愛を語っているような《ホワッツ・ニュー》が特に良い。

このアルバムは、二つのフォーマットによる演奏で構成されている。

ワンホーンによるセッションと、3管によるセッションだ。

個人的には、やっぱりワンホーンによる演奏のほうが良いと思う。マクリーンが好きな私は、とても単純で、マクリーンの音とプレイに浸れる時間が長ければ長いだけで、それだけで満足な気分になれてしまうのだ。

ちなみに、本アルバムは、マクリーン、プレスティッジへの吹き込み7作目となる。

記:2002/10/09

album data

MAKIN' THE CHANGES (Prestige)
- Jackie McLean

1.Bean And The Boys
2.What's New
3.I Never Knew
4.I Here a Rhapsody
5.Jackies Ghost
6.ChasinI The Bird

Track 1,3,4
Jackie McLean (as)
Mal Wardron (p)
Arthur Phipps (b)
Art Taylor (ds)

1957/02/15

Track 2,5,6
Jackie McLean (as)
Webster Young (tp)
Curtis Fuller (tb)
Gil Coggins (p)
Paul Chambers (b)
Louis Hayes (ds)

1957/08/30

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