ジ・アメイジング・バド・パウエル vol.2/バド・パウエル
《ニューヨークの秋》が良い
初期のバド・パウエルは「甘さを排したロマンチスト」だと思う。
溢れるほどのロマンティシズムを持っていながらも、彼の鍵盤から繰り出される厳しいタッチが、ちょうどよい按配の辛口表現となり、耳の肥えた音楽聴きは、きっとそのあたりに魅入られるのだろう。
このことがよく分かるのが、きっと『アメイジング・バド・パウエル vol.2』に収録された《ニューヨークの秋》なのではないかと。
短く簡潔な演奏だが、私は、この《ニューヨークの秋》に今も昔もゾッコンだ。
パウエルの厳しいタッチと、アレンジ、テンポ、どれをとっても「秋」ではなく、限りなく冬に近い「晩秋」だ。
ジョージ・デュヴィヴィエのアルペジオのようなベースラインも良し。
ひたひたと迫りくる濃厚の冬の気配をしのばせつつ、厳しいロマンティシズムをしのばせたピアノがニューヨークの秋を描写する。
これを聴けば、パウエルというピアノ弾きは、安易に聴き手にすりよらない孤高のロマンチストだということがよく分かるはずだ。
《ニューヨークの秋》だけでも、聴く価値が充分にあるブルーノートの『ジ・アメイジング・バド・パウエル vol.2』。
「狂気の天才」などというパウエルのキャッチコピーに臆することなく、是非、聴いてみて欲しい。
ちょっと、いや、かなりシリアスなピアノに感じるかもしれないけれども、心の大きな栄養分になることは確かだ。
記:2011/11/27
album data
THE AMAZING BUD POWELL VOL.2 (Blue Note)
- Bud Powell
1.Reets And I
2.Autumn In New York
3.I Want To Be Happy
4.It Could Happen to You
5.Sure Thing
6.Polka Dots and Moonbeams
7.Glass Enclosure
8.Collard Greens and Black-Eyed Peas
9.Over The Raimbow
10.Audrey
11.You Go To My Head
12.Ornitholoby (alt)
#1,2,3,5,6,7,8,10
Bud Powell (p)
George Duvivier(b)
Art Taylor (ds)
1953/08/14
#4
Bud Powell (p)
Curly Russell (b)
Max Roach (ds)
1951/05/01
#11,12
Bud Powell (p)
Tommy Potter (b)
Max Roach (ds)
1949/08/09